劉昭がそう言い終わると、薛夕は彼女を冷ややかに一瞥し、無視して前に進んでいった。赤い髪が風になびき、奔放な様子だった。
劉昭は拳を握りしめ、何様のつもりだ?
後でどうなるか見てろ!
そう思うと、気持ちが少し落ち着いたようで、得意げに前に進んでいった。
薛夕が数歩進むと、前方に賀郜を見つけ、目を輝かせながら近づいて挨拶をした。賀郜はバスケットボールを抱えて、コートの方へ向かっていた。
彼は小さな炎とは違って、学究肌の人物で、バスケットウェアを着て、引き締まった腕を見せていた。
薛夕は早足で彼の傍らに寄り、声をかけた。「バスケに行くの?」
賀郜は彼女を一瞥し、その鋭い目には不羈な色が宿っていた。頷いて返事とした。
薛夕は続けて言った。「封延は京都に戻ったわ」
賀郜は少し驚いたようだったが、何も言わなかった。
薛夕は何も気付かないふりをして、烈焔會でファイアーシード一号が言ったことを伝えた。「封延が浜山で彼の遺品を見つけたそうよ。でも小さな炎の遺体は爆発で破壊されていたわ。戻ってきてからXHクラブに行ったけど、調子があまり良くないみたい」
賀郜はコートを見つめたまま、彼女の言葉を聞いていないかのようだった。
薛夕もそれ以上は言わなかった。
理解してからは、もう彼との再会にこだわることはなくなっていた。
もし賀郜が小さな炎なら、認めないのには必ず理由があるはずだ。あの黒衣の人物はあまりにも強大で、彼女と小さな炎の二人でも一人に太刀打ちできなかった——小さな炎と再会することは、彼を危険な状況に置くことになる。
絶対的な実力を持つまでは、目立たずに成長することが最も正しい道だ。
前方はバスケットコートで、賀郜は道端から直接コートに入り、薛夕は教室棟に向かうためにさらに前に進まなければならなかった。
薛夕は「バスケ、気を付けてね」と言った。
二人が別れる瞬間、賀郜は突然小声で何かを言った。
薛夕は一瞬固まった。
彼女は賀郜を見つめ、そしてゆっくりと口角を上げ、目に涙が浮かんできた。
彼は今「わかった」と言ったのだ。
……
薛夕には、賀郜のこの一言が何を意味しているのか確信が持てなかった。バスケに気を付けるということなのか、それとも封延のことについてなのか。しかし彼女はすぐに気持ちを切り替えた。