第550話 私は反転した

許昕瑤の弾幕での嘲笑を、この時真剣に本を読んでいた薛夕と、退屈そうに居眠りをしていた秦爽は知る由もなかった。

二時間後も、まだ誰も戻ってこなかった。

許昕瑤の配信ルームの人気が秦爽のルームを上回っているのを見て、ディレクター陣は我慢できずに口を開いた。「秦爽の配信ルームの視聴者数は既に超高いです。この時投げ銭を求めれば、許昕瑤側を一瞬で打ち負かせるでしょう。しかし残念ながら、この二人の性格では難しいでしょうね。」

他のスタッフも次々と頷いた。

休憩室で。

薛夕は既に手元の本を片付け、カバンを開いて、さらに本を取り出していた。

彼女の動きは静かだったが、秦爽は目を覚まし、ぼんやりとした様子で尋ねた。「夕さん、読み終わったの？次は何を読むの？」

薛夕は次に読む『金融学』を取り出し、彼女の前で振ってみせた。「お金の稼ぎ方を勉強するの。」