第561章 私は好きなように書きたい

彼女が透明人間だと知っていたとはいえ、寮にこうして堂々と現れるのは、薛夕にはまだ慣れなかった。

少し間を置いて、彼女は口を開いた。「必要ないわ」

ボブヘアの静かな方方は頭を下げた。「はい」

無口な二人が出会うと、一時的に気まずい雰囲気になった。方方は静かに彼女を見つめ、痩せて小柄な体で隅に立ち、人形のように大人しく賢かった。

薛夕から話しかけた。「しばらく学校に来ないで。明日、于達に会ってみるから」

方方は「分かりました。じゃあ、行きます」と言った。

言葉が終わるや否や、彼女の姿が薄くなり始め、最後には透明になった。ドアが開いて閉まると、方方は去っていた。

薛夕は「…………」

静かにため息をついた。

しばらくして、またドアが開いた。薛夕は方方が戻ってきたのかと思い、「何か用?」と尋ねた。

振り向くと、そこには細い目の中長髪の女子学生が立っており、ぎこちなく笑いながら「夕、夕さん、入っていいですか?」と言った。

薛夕は一瞬驚いて、頷いた。「どうぞ」

女子学生は入ってきて、少し緊張した様子で座った。「私、新聞学科なんですけど、方方のことで来ました」

薛夕は驚いて「本を借りたまま返してないの?」と聞いた。

女子学生は??

慌てて手を振った。「違います、夕さん。実は、みんな方方が失踪したって噂してるじゃないですか?顧雲卿が今日寮を調べに来たのも、この件を調査するためだって。顧雲卿は、あなたが方方の失踪に関係してるって言ってました」

薛夕は眉をひそめた。

女子学生は急いでまた手を振った。「私は夕さんが彼女を殺したとは思ってません。ただ、夕さんはすごく優秀だから、方方を見つけて、彼女の安全を確認する方法を考えてもらえないかと思って」

女子学生は俯いた。「方方は冷たそうで、淡白で、人付き合いが少ないように見えますけど、実は心優しくて、とても有能な人なんです。私は三年生で、今年インターンに行ったんですけど、会社に騙されて、不公平な契約を結ばされてしまって。卒業後に三年間最低賃金で働くか、二十万元賠償金を払うかって。本当に絶望的で、ずっと泣いてました。でも方方が、解決したから大丈夫って言ってくれて。後で、その契約書が私のところに宅配で届いて、契約書がなくなったことで、この件は終わったんです」