第655章 代理学部長！

サイン？

退学勧告書なのに、学生本人の同意のサインが必要なんですか？学校が直接発表して追い出すんじゃないんですか？

学生たちが皆呆然としている中、薛夕が通知書を受け取った。

李學磊は得意げに言った：「へっ、何を見てるんだ？退学勧告書だよ。馮老先生がお前の面子を立ててくれて、自分でサインして自分で出て行けってことさ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、薛夕の隣に詰め寄っていた李紫夏が辞令の内容を読み上げた：「……本校は薛夕女史を本校数学科名誉教授として謹んで招聘いたします！……」

この言葉が出た瞬間、場内は静まり返った！

全員が信じられない様子で薛夕を見つめ、そして彼女の手にある辞令書を見た。

何人かが信じられないように唾を飲み込み、皆さっきの言葉を聞き間違えたか、錯覚だったに違いないと思った。

薛夕さん……名誉教授？

薛夕さんはまだ19歳でしょう？

華夏大學数学科の名誉教授？薛夕さんは学部生じゃないの？飛び級もしていないのに、もう教授に？

これは、あまりにも非現実的すぎる！！

この静寂の中、薛夕は辞令書を読み終え、自身も困惑していた。

教授？

彼女が華夏大學に来たのは学ぶためであって、教えるためではない。しかも今の彼女のレベルで、何を教えられるというのか？

みんなに恋愛を控えて、真面目に勉強するように教えるとでも？

薛夕は無表情のまま顔を上げて王校長を見た：「校長先生、これは私には務まらないと思います……」

その言葉が出かかったところで、王校長はため息をついた：「これは馮老先生が退職する前の最後の願いなんだ。本当に断るつもりかね？」

馮老先生の願い。

薛夕は固まった。

馮省身が刑務所で余生を過ごすことになること、先生が研究のために十年の寿命を捧げたこと、先生と知り合ってから今まで、自分に与えてくれた数々の助けを思い出して……

王校長は彼女の心が動いたのを見て、さらに言葉を重ねた：「馮老先生の生涯の夢は、華夏大學を世界に導き、我が国の数学を世界に認めさせることだった。薛夕さん……いや、今からは薛夕女史だね。本当に、受け入れないつもりかね？」

馮省身が求めていたのは、決して華夏大學の数学科が国内一位になることではなかった。

中国の数学を世界へ導くことだった。

これは重責だ。

馮老先生の生涯の願いだ。