第681章 今日はデート!

薛夕が階段を降りると、向淮はすでにそこにいた。

黒いマイバッハが玄関前に停まっており、彼は車に寄りかかっていた。黒いパーカーを着て、光を背にしていた。彼女が階段を降りてくる音を聞いたのか、振り向いた。

薛夕を見ると、向淮は歩み寄り、まずタピオカミルクティーを彼女に手渡した。

薛夕はそれを受け取って一口飲むと、向淮は助手席に移動して彼女のためにドアを開けた。

薛夕が乗り込む際、向淮は彼女の頭を守るように手を添えた。まるで彼女が頭をぶつけることを心配しているかのように。

薛夕が乗り込んだ後、向淮は突然身を屈めた。

薛夕の後ろにいた薛晟は、この状況を見て、思わず飛び出したくなった。

娘が車に乗ったばかりなのに、もう手を出すのか?

今キスでもしているのか?

しかし彼は我慢した。

さすがに人前では、向淮も度を越した行動はしないだろう。

でも会ってすぐにキス...この小向くんは本当に色っぽい、やはり男の本性だ!

この瞬間、薛晟がキスを想像していた向淮は、ただ親切に薛夕のシートベルトを締めていただけだった。身を屈めた時、二人の距離はとても近かった。

向淮はシートベルトを締めた後もその場を離れず、わざと薛夕を見つめた。彼女は大きな目をパチパチさせながらタピオカミルクティーを一口飲んだだけで、少しの照れもなかった。

向淮:「…………」

彼は口角を引き締めながら体を起こし、運転席へと向かった。

焦る必要はない。

今日はまだ一日あるんだから!

最初から彼女を警戒させてはいけない。

向淮はそう考えながら、必ず成功するという光を瞳に宿した。今日は絶対に彼女の目に自分しか映らないようにしてみせる!

彼が団地を出た後、薛晟はすぐに車で尾行を始めた。

妻は娘が恋愛できずに一生独身になることを心配しているが、自分はそうではない。娘はこんなに美しいのに、まだ19歳だ。豚に荒らされてはいけない!

車内。

向淮が運転する中、薛夕は退屈のあまり、バッグから単語帳を取り出そうとした。開こうとした瞬間、向淮が口を開いた:「今日は勉強なし。」

薛夕:?

彼女が何か言おうとすると、向淮が付け加えた:「約束したでしょう。今日は僕の言うことを聞くって。」

「…………」

薛夕は黙って単語帳を下ろした。突然、時間がとても長く感じられた。