第688章 その名前は、言えない

高彥辰は急に鄭直を見つめ、そして口を開いた:「何か知っているんじゃないか?」

鄭直は嘲笑って:「彼らはあの黒服の超能力者に殺されたんだ。あの組織は悪事を働くことを専門としている。お前の両親を殺しただけじゃない、他にもたくさんの人を殺している。我々特殊部門は常に彼らの逮捕を試みているが、まだ手がかりがないだけだ。復讐したいなら、なぜ我々に加わらないんだ?一つには国を守ることができ、二つ目には、ついでに復讐もできる」

高彥辰は眉をひそめた:「一体どんな組織なんだ?組織の名前は?」

この言葉に、鄭直の目が揺らぎ、明らかに自信なさげな口調で答えた:「どんな組織かなんて気にするな、復讐できればそれでいいだろう?とにかく、彼らは善人じゃない」

高彥辰の目に疑いの色が浮かんだ:「組織なのに、名前すらないわけがないだろう。まさか単に黒服組織とでも呼ぶのか?」

鄭直は咳払いをした:「彼らの名前は、言えない」

高彥辰:?

鄭直はまた咳払いをした:「とにかく、言えないんだ。我々に加入しない限り、教えられない」

高彥辰は目を伏せた:「言わなければ結構だ」

未練なく背を向けて立ち去った。

鄭直は彼の背中を見つめ、何も言えなかった。

彼は本当によく分かっていた。彼らの組織は高彥辰に対してあれほどの善意を示してきた。かつて高彥辰が浜町で殺されそうになった時、彼らの組織が彼を救った。覚醒後、最初ボスは彼が危険だと言い、だから偽の身分を作って、安全に生きられるようにしたのだ。

これは高せんせいの意向だと言っていた。

そこで、彼らは苦心して賀郜という身分を作り上げた。

しかし今や、黒服に正体を見破られてしまった。なぜ彼らに加わろうとしないのか?

鄭直は「ふん」と鼻を鳴らし、この男には全く国家観念がない、視野が狭すぎると思った!

彼は怒りながら背を向け、立ち去ろうとした時、薛夕が後ろに立っているのに気づき、反射的に彼女の後ろを確認した。ボスがいないのを見て、やっと安堵のため息をついた。

そして彼はいつもの嫌な態度に戻った:「薛夕、お前には仕事への情熱がないのか?いつも……」

ボスにまとわりついて、仕事ができないようにして。