第767章 事態が悪化する

方怡は胸がドキッとして、直接秘書を見上げた。「どうしたの?」

秘書は口を開いた。「去年、新しいマンションを開発したんですが、今年引き渡しになって、入居者たちが一斉に解約を求めているんです!」

方怡は急に立ち上がった。「どういうことなの?」

「マンションがモデルルームの引き渡し基準に達していなくて、手抜き工事があったみたいで...」

方怡はその場で呆然とした。「じゃあ、どうすればいいの?」

秘書:「…………」

彼女がここに来たのは、方怡に判断を仰ぐためじゃなかったのか?なぜ逆に彼女に聞くのだろう?

秘書は口角を引きつらせながら、話し始めた。「当社の不動産事業では、このような事態は稀です。今回も錢社長が人を見る目を誤ったせいです。今回は間取りがモデルルームと異なっており、これは明らかに契約違反です。入居者と強行対決するわけにはいきませんが、修復するとなると壁の設計からやり直すことになり、コストが高すぎます!」

方怡は困惑した。「錢鑫なら、このような状況でどうするでしょう?」

秘書は美しい容姿の女性で、まだ30歳にも満たず、海外の名門大学を卒業し、現在は秘書部のマネージャーを務めている。この質問を聞いて、思わず目を回した。「錢社長なら、あの頼りない人は損失を補償するでしょうね!」

方怡:?

秘書は笑って言った。「錢社長の人生の目標は、一度でいいから赤字を出す取引をすることなんです!そのために多くの無謀な決定をしてきました。でも残念ながら、最終的にはいつも成功してしまうんです。どの決断も、予想外の展開で利益を生んでしまうんです。」

秘書の言葉には軽蔑の念が満ちていた。海外の名門大学を卒業した専門家として、帰国後は大きな仕事をしたいと思っていたのに、こんな頼りない上司に出会ってしまったのだから。

しかし、秘書の表情には誇りが溢れていた。

これまでの長い付き合いの中で、錢鑫は確かに一度も損をしたことがない。この事実は、誰もが認めざるを得ないものだった!

だから今、錢鑫が全資産を希望工程に寄付すると言い出しても、おそらく会社の幹部たちは誰も反対しないだろう!

実際、以前にもそのようなことがあった。彼は東北なまりで命令を下した。「なんでこんなに儲かっちまうんだ。全部希望小学校に寄付しちまえ!これで利益が出るかどうか見てみろ!」