しかし、彼女はどうしてこの異能を持っているのか?
彼の知る限り、世界中の超能力者の中で、この異能を覚醒したのは彼一人だけだった。この能力があれば、時間を停止して、食事をしたり、寝たり、何でもできる。
この数年間、彼は何の心配もなく自由気ままに生きてきた。
人を殺しても、何の痕跡も手がかりも残さない。だから誰も彼が殺人者だとは知らなかった。しかし——
特殊部門の、誰もが知っているあの人物が、空気中に毒を仕込んだ。
時間を停止していても、彼は空気を消費し、呼吸する必要があった。そうして毒気を吸い込み、倒れて捕まってしまった。
そして特殊部門の監獄に収監された。そこには何が仕掛けられているのか分からないが、すべての異能が使えず、脱出することもできなかった。
それに、時間を停止しても、誰も鍵を持ってきてくれるわけではなく、逃げ出すのは至難の業だった。