第780章 私は薛夕を探している

クロネコさんは怯えきっているようで、体が震えていた。その様子を見て、薛夕は少し心が痛んだ。

特殊部門では、このクロネコさんは口が悪く、いつも人を見下すような態度をとっていたが、それでも彼女は「仲間」だった。

薛夕は眉をひそめ、もう一度彼女の毛を撫でた。

これ以上質問するのを控えた。この猫が病気になってしまうのが怖かったからだ。ただ彼女を慰め続けていると、クロネコさんは徐々に震えが収まり、普通の状態に戻ってきたようだった。

しばらくして、クロネコさんはようやく小さな声で話し始めた。「夕さん、この人は危険です。絶対に近づかないでください。」

薛夕は眉をひそめた。「一体どうしたの?」

クロネコさんは歯ぎしりしながら言った。「とにかく覚えておいて、彼は狂人よ!」

そう言うと、クロネコさんはもうそれ以上話したくないような様子で、薛夕のベッドの隅に身を寄せ、体を丸めた。

しばらくして、まだ安全ではないと感じたのか、クローゼットの中に飛び込んで自分を閉じ込めた。しばらくしてから、クロネコさんはクローゼットから頭を出して言った。「夕さん、私を特殊部門に戻してくれませんか?」

薛夕:…………

なんて不安な様子なんだろう!

彼女は口角を引きつらせながら、相手を無視して椅子に座って本を読み始めた。

リビングにいる人のことなんて——彼女に関係あるのだろうか?

しかし、一部の注意をリビングでの会話に向けていた。しばらく経っても何も聞こえてこないので、薛夕はゆっくりと眉をひそめた。

別に好奇心からではない。學習に関係ないことには興味がないのだから。ただ、クロネコさんが言う狂人が祖父や祖母を傷つけないか心配だった。

彼女は思い切って立ち上がり、ドアの所まで行って外を見ると、リビングの雰囲気が……少し異様だった。

艾司という男性がソファにきちんと座り、祖父と祖母も座っていた。そして三人はただ……向かい合って座っているだけだった。

なるほど、彼女の敏感な耳でも三人の会話が聞こえなかったわけだ。三人は全く話をしていなかったのだから!

薛夕:「……」

そうしてしばらく経った後、宋文曼はため息をついた。「艾司、こんなに長い年月が経っているのに、まだこんなに無口なの?」

艾司:「……うん。」