向淮は冷静さを保とうと努め、前を見つめながら、真剣で無表情に言った。「聞き間違いだよ」
薛夕は騙されなかった。「覚えてるわ。最初にあなたと知り合った時、私たち付き合うことになって、ある日夢であなたを見たの...それに後で、大学入試の時、あなたがいなかった期間も、夢で見たことがあって、昨日の夜も!」
何度もエッチな夢を見たけど、結局全部彼のせいだったなんて!
向淮は咳払いをして、「これは説明しておかないと。私が仕掛けた夢もあれば、そうでないものもある」
薛夕は驚いた。「どれがそうで、どれがそうじゃないの?」
向淮は前を見続けながら「まあ、随分昔のことだから、忘れちゃったな」
「私は覚えてるわ。一つずつ話しましょう」薛夕はゆっくりと口を開いた。「確か一度、あなたの腰を見て、その夜の夢であなたが服を脱ぐのを見たわ。あれ、あなたの仕業でしょう?」
昼間に男性の腰を見た時は変な考えなんて全然なかったのに、どうして夢の中でそんな風になったの?
向淮「一年半も前のことを、よくそんなに覚えているね」
薛夕は冷たく、涼しげに言った。「仕方ないわ、記憶力がいいから」
向淮「……」
薛夕「黙ってるってことは認めたってことね。じゃあ次は……」
「…………」
当時は夢の中で恋愛の仕方を教えてあげようと思っただけで、そんなつもりじゃなかったのに、今こうして話すと、なんだか自分が変態みたいじゃないか?
彼女の中での自分のイメージに影響が出そうだ!
向淮は急いで彼女の言葉を遮り、話題を変えた。「夢の話は後にして、今日の経済犯罪の話をしよう」
薛夕は案の定、注意をそらされた。「どんな経済犯罪?」
向淮は説明した。「この超能力者には夢に入る異能があって、他人の夢に自由に入れる。意図的にビジネス界の大物たちの夢に入り込んで、夢の中で曖昧な話をする。例えば、ある土地の価格が高いから競争しないようにと託宣して、心理的な暗示をかける。そうやって利益を得ているんだ。これは浜町の経済発展のバランスに重大な影響を及ぼしている。こういう超能力者は逮捕して裁かなければならない」
薛夕は納得して頷いた。「あなたには異能がないんじゃなかった?」
向淮「ドリームウォーカーは他人も一緒に夢に連れて行ける」