薛夕がこのショッピングモールに入ると、中は人っ子一人いないことに気づいた。
広大な空間が、がらんとしていた。
彼女は以前ここに来たことがあり、周囲にも比較的馴染みがあった。
かつて葉儷が連れて行ってくれた高級ブランドショップも、今は開いているものの、中の店員はおらず、おそらく陸超が全員退去させたのだろう。
ここに犯罪者がいることを知り、早めに人々を避難させるのは、捜査の手段の一つだ。
薛夕が躊躇いながら振り向き、向淮にあの人がどこにいるのか聞こうとした時、上階から小虎牙ちゃんの声が聞こえた。「ボス、夕さん、来てくれたんですね?早く手伝いに来てください!」
薛夕は二つ返事で二階へ駆け上がった。
今、陸超は二階の図書館にいた。この図書館はカフェも併設されており、以前葉儷が言っていたように、ここでコーヒーを一杯注文すれば、一日中本が読めるのだという。