向淮の言葉が落ちると、入り口から黒いスーツを着た数人の男性が入ってきた。
彼らは訓練を受けており、一目でプロのボディガードだとわかった。彼らは非常に秩序正しく宴会場を検査した後、周囲の数カ所に分かれて立った。
皆はこの様子に驚いていた。
どんな人物がこのような警備体制で移動するのか想像もつかなかった。
まさか、本当に……林婧なのだろうか?
そう考えていると、一人の黒服の男性が報告した。「報告します。検査完了、すべて安全です。」
すぐに、入り口に二人の人影が現れた。
一人は黒いスーツを着た中年男性で、厳格で真面目そうな雰囲気を漂わせていた。その顔は……宴会場にいる全員を驚かせた。
そして中年男性の隣には、上品なチャイナドレスを着た林婧がいた!
彼女は髪を結い上げ、チャイナドレスが細い腰を包み、中年男性の腕を取って入ってきた。まさに美男美女の組み合わせだった。
二人とも若くはなかったが、歳月は彼らに優しかったようで、二人の強烈なオーラを無視すれば、30代半ばにしか見えなかった。
宴会場は水を打ったように静まり返った!
参加者全員が目を見開き、こんな場所で彼ら二人に会えるとは思ってもみなかった。
先ほどのボディガードたちの行動を考えると、この二人のためだとしたら、それはあまりにも控えめだったのではないか?!
誰かがつばを飲み込み、思わずつぶやいた。「夢を見ているんじゃないよね?」
この静寂の中、林婧は向おとうさんの腕を取りながら彼らの前に来て、眉を上げて葉儷を見た。「儷儷、ごめんね、遅れてしまって。彼のせいよ!」
彼女は向おとうさんの腕を軽く叩いた。「お正月も彼は忙しすぎて、昨夜も会議だったの……今日急遽飛んできたの。彼を待っていなければ、もっと早く来られたのに!」
この親しげな口調……
皆は一斉に息を飲んだ!
これが葉儷の言っていた「少し話したことがある」関係?
皆が驚いている間に、薛晟がいち早く反応し、急いで一歩前に出た。「よく来てくださいました。上の階でお話しましょう。」
このような大物が、下の階で人々に見られるわけにはいかない。
向おとうさんはうなずいた。
この時になって、呆然としていた葉儷もようやく我に返った。
彼女は喜びに満ちた様子で林婧の側に駆け寄り、尋ねた。「どうして来てくれたの?」