感情がまったくない?
薛夕は一瞬混乱した。彼女はこの「代償」という言葉の意味がわからなかった。
岑白はすでに慣れているようで、目を伏せながらゆっくりと口を開いた。「僕が5歳の時、祖父が亡くなった。祖父は生きている時、僕にとても優しかった。その時、母は僕を支えながら泣くように言ったけど、僕は泣けなかった。母は『もう二度と祖父に会えないのよ、悲しくないの?』と言ったけど、本当に、少しも悲しくなかった。」
岑白は苦笑いした。「その後、母は僕がまだ幼いからだと思っていたけど、年齢が上がるにつれて、僕の異常さに気づいて、多くの医者に診せた。最終的な結論は、僕にはまったく感情がないということだった。愛もなければ憎しみもない。両親に対しても見知らぬ人に対しても同じ。僕はただ生きている死体のようなものだ。」