第842章 共に前進する

薛夕はいつも冷淡な人だった。

幼い頃から孤児院で育ち、親族がほとんどいなかった。後に葉儷や薛晟を受け入れたが...実を言うと、それにもかなりの時間がかかった。

おしゃべりさん、小さな炎、烈焔會の人々、そして特殊部門の何人かの特定のメンバーたちとも、徐々に接触を重ねて初めて感情が芽生えた。

彼女には理解できなかった。一体何が、これらの人々を他人の命のために自分を犠牲にさせるのか。

しかし、それでも心を揺さぶられた。

皆が忙しく動き回っていた。超能力者も、一般の軍人も、警察官も...

この時、この瞬間、超能力者たちはもはや自分たちの存在を隠さず、頻繁に異能を使用していた。この瞬間、ただ京都を守るためだけに！

薛夕は笑笑も群衆の中にいるのを見た。普段は食欲旺盛なこの少女も、今は防護服を着て、現場の外で待機し、中にいる超能力者たちが出てくるのを待っていた。彼女が次に入る番だった。

彼女はその場で体を動かし、顔には少しの恐れもなかった！

ついに、彼女が危険区域に入る番が来た。

彼女はためらうことなく、中に飛び込んだ。

核爆発は一連の高危険放射性物質を噴出させ、埋め立てる際には、それらのものをすべて穴の中に戻す必要があった。

超能力者たちがやっていたのは、まさにこの仕事だった！

黒いセキボク（石墨）は、今や汚染され、強い放射線を放出していた。中から出てきた超能力者たちの手のひらは熱くなっていた。

薛夕がぼんやりしている間に、笑笑はすでに自分の使命を果たし、外に飛び出してきた。

「救援隊！」

すでに中に入って出てきた景飛が、突然叫んだ。

薛夕は急に振り向き、笑笑が出てきた瞬間に地面に倒れるのを見た。

彼女は急いで飛んでいき、尋ねた。「どうしたの？」

景飛は眉をひそめた。「この子は自分の力が強いことを過信して、大きなセキボクの塊を運んだんだ。今は普通の人より放射線を多く浴びている。夕さん、どうすればいい？」

薛夕は笑笑をつかみ、高放射線区域から飛んで離れ、外周に一時的に設置されたテントに連れて行った。そして笑笑の放射線防護服を引き裂くと、彼女の腕全体が赤く腫れ、まるでやけどをしたようになっているのが見えた。

高強度の放射線は、皮膚を通して直接内臓を焼く。

笑笑のこの腕は...もう助からない。