第290章 天禧門

「お兄さんが、あなたを連れ戻しに来るの?」夏天は尋ねた。彼は前回来た人を覚えていて、結局夏天に追い返されたのだった。

  前回、冰心は彼に兄のことを話していた。彼女の兄は大したやつだそうだが、詳しい事情は冰心は話さなかった。

  「うん、兄からもう電話があったわ。すぐに来るって」冰心の顔色はとても悪かった。彼女は兄を恐れているようで、夏天には冰心が帰りたくないのが分かった。

  「本当に帰りたくないんだよね?」夏天は冰心に向かって尋ねた。

  「うん、帰ったら、きっとおじいちゃんが軍人と見合いをさせるわ。そういう運命を押し付けられるのが大嫌い」冰心は真剣に言った。彼女は自分の人生をそんな風に決められたくなかった。

  彼女は自分の好きな人を見つけて、華々しく生きたかった。