紫色のエネルギーは夏天にしか見えなかった。紫色のエネルギーと掌が衝突した瞬間、両方が同時に消えた。
「あれ?」
座っていた男は少し驚いた。五割の力を込めた一撃が夏天に無効化されたのは、あまりにも信じがたいことだった。
「違う、お前は靈器を持っているな」その男は眉をひそめ、すぐに喜色を浮かべた。
夏天は相手が靈器に触れた時点で事態が悪化すると悟った。相手の顔に浮かんだ貪慾な表情を見て、自分の靈器を奪おうとしているのは明らかだった。そう思った瞬間、夏天は逃げる準備を始めていた。
「夏天、靈器を渡せば命は助けてやる」その男は夏天を見つめながら言った。
「何を言っているのか分からない」夏天は眉をひそめ、出口に目を向けた。どうやって逃げ出すか考えていた。
「お前たち二人で行け。奴から探し出せ」その男は夏天の近くに立つ二人を見て言った。「この二人は玄級中期の実力だ。まずはこの二人を相手にしろ」