葉辰が洗面所から出てきたところ、ちょうどお茶菓子を運んでいる可愛らしい女性が彼の個室に向かっているのに出くわした。
彼は個室に誰かが来て邪魔されたくなかったので、その女性に指示した。「それは私に渡してください。自分で持っていきます。」
スタイルの良いその美人のウェイトレスは、もちろん葉辰が個室の主人だということを知っていた。前例はなかったが、それでも頷いて、慎重に葉辰に手渡した。
「葉さま、何かご用がありましたら、テーブルの上のボタンを押してください。」
彼女はよく分かっていた。相手は若く見えるかもしれないが、御豪クラブに入れる人は、彼女が得てして怒らせてはいけない人たちだということを!
女性ウェイトレスが去るのを見送った後、葉辰はお茶菓子を持って個室に入ろうとした。
突然、背後から澄んだ女性の声が聞こえた。
「葉辰?」
この澄んだ声を聞いて、葉辰の体はほとんど石化した。
彼の瞳には次第に冷たさが漂い始めた。
楚淑然!
江城楚家の楚淑然!
彼はこの女の声を決して忘れることはないだろう!
まさにこの女が全校生徒の前で自分を拒絶したのだ!
さらには「無能」という言葉を彼の悪夢にしたのだ!
彼を万丈の深淵に落としたのだ!
もしこのことがなければ、両親も雲湖山荘のパーティーに出席することはなかった!そして死ぬこともなかった!
もちろん、厳密に言えば、このことすべてを楚淑然のせいにすることはできない。
姚金谷は死ぬ前に彼に告げた。たとえ両親があのパーティーに参加しなくても、京城のあの男は葉家を見逃すことはなかっただろうと。
これらすべては、単なる陰謀に過ぎなかった。
葉辰は殺意を抑えた。彼には女性を殺す習慣はなかったが、この女に少しずつ恐怖と後悔を感じさせる方法を考えるつもりだった。
これは彼女を殺すよりも、おそらくもっと苦しいだろう。
葉辰は身を翻し、冷静に目の前の楚淑然を一瞥した。
さすがは当時の学校一の美人、これほどの年月が経っても、楚淑然の容姿はますます輝かしく、体つきも発達し、異常なほど豊満で魅惑的だった。
彼女の雰囲気も青臭さが抜け、代わりに冷たさと艶やかさが漂っていた。