天正グループの方。
舵おやじが現れた瞬間、沈海華は呆然とした。
完全に呆然としてしまった。
彼は10年前から江城の上流社会に入り込んでいたので、当然、彼らに向かって歩いてくるその猫背の男が誰なのかを知っていた!
ここ数年、彼は何度も御豪クラブの会員になりたいと思っていたが、得られた答えはただ一つだった!
彼にはそもそも資格がないのだ!
しかし今、御豪クラブの背後にいる舵取り役が現れたのだ!
さらに天正グループに直接花籠を届けに来るなんて、これは彗星が地球に衝突するよりも奇妙だぞ!
舵おやじが沈海華の顔を立てて来るはずがない!間違いなく葉さまだ!
しかし、彼は葉辰がすごいことは知っていたが、こんなにすごいとは知らなかったのだ!
舵おやじは花籠を置くと、葉辰の前に来て、両手を合わせ、爽やかに言った。「殿…葉さま、おめでとうございます!これからは天正グループが必ず財源豊かになり、幸運に恵まれますよ」
葉辰はうなずき、淡々と言った。「ありがとう」
舵おやじは慌てて手を振った。「当然のことです」
そう言うと、彼は黙って後ろに立った。
本来ならCポジションに立つべき男が、葉辰の後ろに立つことを選んだのだ。
この光景を見て、夏如雪の美しい瞳は驚きと衝撃に満ちていた。
舵おやじの身分について、彼女は多少知っていた。江城の家族の族長がこのような大物に会えば、おそらく頭を下げてペコペコしながら感謝するはずだ。しかし葉辰は全過程で少しも動揺せず、むしろ舵おやじの方が慎重に振る舞っていた!まるで舵おやじが葉辰の顔色を窺っているようにさえ見えた。
どうしてこんなことが…!
彼女は葉辰をじっと見つめ、この男が思っていた以上に単純ではないことに気づいた。
もしかしてこいつの身分が並じゃない?
……
「こんなことあり得ねぇ…」
群衆の中の趙有成は頭が真っ白になり、何を言えばいいのかわからなかった。
舵おやじってどんな身分だよ!どうして直接天正グループに花を届けに来るんだ!