葉辰は金家に入り、横たわる死体たちを一瞥した。
目を覆いたくなるような光景だった。
老若男女問わず、誰一人として助からなかった。
胸を無理やり打ち砕かれ、血の穴が開いている者もいた。
血肉が飛び散っていた。
これほどの実力を持つ者が、こんな一般人相手にするとは。
笑止千万だ!
華夏は何もしないのか?
葉辰は金家全体を見回したが、金冷雁と金おとうさんの遺体は見つからなかった。
二人は飛行機に乗っているか、それとも行方不明になったのだろう。
小鄧くんも中に入ってきて、死体を見るや眉をひそめた。
「葉さま、この金家は江城の武道の名家だったはずです。こんな風に一族皆殺しにされるなんて、やった勢力はさぞ強いに違いありません」
葉辰は小鄧くんを見て尋ねた。「事故に遭った飛行機の件、龍魂の調査はどうだ?」
小鄧くんは首を振った。「龍魂からはまだ連絡がありません。おそらく捜索中でしょう」
話が終わるか終わらないかのうちに、葉辰の携帯が鳴り出した。
應擎からだった。
通話ボタンを押すと、應擎の声が聞こえてきた。「葉さま、事故に遭ったプライベートジェットの初期調査結果が出ました。機内には乗客がおらず、パイロットと安全要員だけが亡くなっていました。金家の父娘はこの飛行機には乗っていませんでした。
しかし……」
葉辰の瞳が縮んだ。「しかし、何だ?」
「葉さま、つい先ほど江城の林石湖付近で遺体が発見されました。照合の結果、金冷雁の父親である金向明だと思われます。現場には争った形跡がありました。金向明は宗師強者でしたが、それでも圧倒されて殺されています。現場の痕跡から見て、金向明は犯人を足止めしようとしたようで、肋骨と腕を無理やり踏み潰されています……」
この言葉を聞いて、葉辰の瞳が微かに縮んだ。
一つの玉の護符のために、ここまでする必要があるのか?
人命はそんなに軽いものなのか?
「金冷雁は見つかったか?」葉辰は言った。