第60章 よくも悪魔と呼んだな

葉淇は窓の外を見つめ、一世紀も経ったような気がした。

  あの日、彼女は陸厲沉が嚴治と袁明を銃殺するのを目の当たりにした。

  彼女も死んでしまいたかった、永遠に陸厲沉への借りを返すために。

  しかし、彼女は死ねなかった、まだ生きていた。

  それ以来、彼女は悪夢にうなされ、夢の中では嚴治と袁明が自分の目の前で死んでいく姿ばかりだった……

  彼らの若くて美しい顔、話をしている時の表情、自分を守るように後ろに立たせていた光景。

  一つ一つの仕草、一つ一つの動き、過ごした時間の一コマ一コマが、彼女の脳裏に浮かんでは消えていった。

  彼らはあんなに若かったのに、あれほどの苦労をして魔都の森から逃げ出したのに。

  まだまだ素晴らしい人生があったはずなのに、それらすべてが陸厲沉によって終わらされてしまった。

  葉淇は拳を握りしめ、目をきつく閉じた。

  福おじさんは彼女の険しい顔色を見て、低い声で言った。「お嬢様、目覚めたばかりですから、少し流動食を取られてはいかがですか。お粥を用意させましたが。」

  「結構です。」葉淇は重々しく言った。「まだお腹が空いていません。」

  「でも、お体が……」

  「大丈夫です。行ってください。」

  福おじさんは呆然とした。彼は葉淇と長年の付き合いがあったが、彼女がこれほど平静なのを見たのは初めてだった。

  彼は葉淇をじっと見つめ、今の葉淇が変わったように感じたが、どこが変わったのかはっきりとは言えなかった。

  福おじさんは少し躊躇してから言った。「わかりました。食べたくなったら教えてください。その時に使用人に持ってこさせます。」

  葉淇は目を閉じてから開いた。「結構です。学校に行きます。」

  彼女は立ち上がって身支度をしようとしたが、福おじさんが止めた。「葉さん、若旦那があなたを転校させました。もう帝都大學ではありません。」

  葉淇は少し驚いて、目を上げて福おじさんを見た。

  福おじさんは続けた。「今は海城大學に通っています。明日、運転手が学校まで送り、手続きをします。」

  葉淇はただうなずいた。「わかりました。」