そして、バスルームに駆け込み、冷水をひねって直接体にかけた。
蘇沫は怒り心頭だった。こんな良い機会を逃してしまうなんて。
今回もまた失敗したことを痛感した。
立ち上がり、寝室を出た。
浴室では、靳澤が全身火傷のように苦しんでいた。冷水を浴び続けても、心の中の苦しさは和らがなかった。
そして頭の中では、時折溫倩の小さな顔が浮かんでは消えた。
さらには、もし溫倩が今ここにいたら、彼女を食い尽くしてしまうだろうという考えさえ浮かんだ。
靳澤は浴室で一晩中過ごしたと言っても過言ではなく、冷水に浸かり続けた。アロマの効果はそれほど強くなかったため、空が白み始めるころになってようやく体内の炎が収まってきた。
そして彼は浴室の床に倒れ込んでしまった。
翌日、使用人が部屋の掃除に入った際、浴室で倒れている靳澤を発見し、大変驚いて急いで病院に搬送した。
靳澤が目覚めたとき、周りには強烈な消毒液の臭いが漂っていた。
ゆっくりと目を開けると、自分が病院のベッドに横たわっていることに気づいた。傍らには秘書の白冰が立っていた。
白冰は靳澤が目覚めたのを見て、すぐに尋ねた。「少爺、お目覚めですか?気分はいかがですか?」
靳澤は頭を押さえながら起き上がり、尋ねた。「私はどうしたんだ?」
「少爺、使用人が部屋の掃除をしていたとき、浴室で倒れているのを発見しました。高熱も出ていたので、病院に搬送したのです。」
「倒れていた?熱が?」
「はい!」白冰は答えた。
靳澤は深く考え込み、昨夜何が起こったのか懸命に思い出そうとした。
仕事を終えて部屋に戻ったところまでは覚えている。その後誰かが部屋に入ってきて、そしてからだが制御できないほどイライラし始めたことを。
蘇沫!
この女、大胆すぎる。
「白冰!」靳澤の氷のような声が響いた。
「少爺、ご命令を。」白冰が言った。
「すぐに私の部屋に戻って、昨夜部屋に何か置かれていないか調べろ。」
きっとあの香りが問題だ。
白冰は命令を受け、すぐに立ち去った。