第204章 蘇沫を完全に家に追い返す

そして、バスルームに駆け込み、冷水をひねって直接体にかけた。

  蘇沫は怒り心頭だった。こんな良い機会を逃してしまうなんて。

  今回もまた失敗したことを痛感した。

  立ち上がり、寝室を出た。

  浴室では、靳澤が全身火傷のように苦しんでいた。冷水を浴び続けても、心の中の苦しさは和らがなかった。

  そして頭の中では、時折溫倩の小さな顔が浮かんでは消えた。

  さらには、もし溫倩が今ここにいたら、彼女を食い尽くしてしまうだろうという考えさえ浮かんだ。

  靳澤は浴室で一晩中過ごしたと言っても過言ではなく、冷水に浸かり続けた。アロマの効果はそれほど強くなかったため、空が白み始めるころになってようやく体内の炎が収まってきた。

  そして彼は浴室の床に倒れ込んでしまった。

  翌日、使用人が部屋の掃除に入った際、浴室で倒れている靳澤を発見し、大変驚いて急いで病院に搬送した。

  靳澤が目覚めたとき、周りには強烈な消毒液の臭いが漂っていた。

  ゆっくりと目を開けると、自分が病院のベッドに横たわっていることに気づいた。傍らには秘書の白冰が立っていた。

  白冰は靳澤が目覚めたのを見て、すぐに尋ねた。「少爺、お目覚めですか?気分はいかがですか?」

  靳澤は頭を押さえながら起き上がり、尋ねた。「私はどうしたんだ?」

  「少爺、使用人が部屋の掃除をしていたとき、浴室で倒れているのを発見しました。高熱も出ていたので、病院に搬送したのです。」

  「倒れていた?熱が?」

  「はい!」白冰は答えた。

  靳澤は深く考え込み、昨夜何が起こったのか懸命に思い出そうとした。

  仕事を終えて部屋に戻ったところまでは覚えている。その後誰かが部屋に入ってきて、そしてからだが制御できないほどイライラし始めたことを。

  蘇沫!

  この女、大胆すぎる。

  「白冰!」靳澤の氷のような声が響いた。

  「少爺、ご命令を。」白冰が言った。

  「すぐに私の部屋に戻って、昨夜部屋に何か置かれていないか調べろ。」

  きっとあの香りが問題だ。

  白冰は命令を受け、すぐに立ち去った。