第221章 陸厲沉、蠱毒に中る（1）

自分以外では、雲夢雨が最大の容疑者だった。

「ふふ、バッハ、あなたは私を買いかぶりすぎよ」

「私がこの間ずっと帝都にいて、全く海外に出ていなかったことは言うまでもないわ」

雲夢雨は笑いとも笑いでないような表情でバッハを見つめた。「たとえS国に行ったとしても、本当に私に葉氏城から葉淇を連れ去る能力があると思う？」

バッハは少し戸惑った。確かにそうだ。

葉氏城は警備が厳重で、たとえ内乱が起きたとしても、雲夢雨一人では葉淇を連れ出すことなどできるはずがない。

しかし、雲夢雨でないとすれば、一体誰なのだろうか？

事態はますます複雑になっていくようだった。

雲夢雨はソファに座り、悠然と言った。「バッハ、私はさっきも言ったけど、葉淇の失踪はあなたとは直接関係ないわ」

「私を問い詰める時間があるなら、陸厲沉の手から葉淇を取り戻す方法を考えた方がいいわよ」

「これはあなたたち男の尊厳にかかわる問題よ」

バッハは冷たい声で言った。「それは私の問題だ。お前には関係ない」

「雲夢雨、おとなしくしていろ。陸厲沉に近づくな」

「心理医の立場を利用して、事を荒立てたり、騒ぎを起こしたりするなよ」

「それと、嘘をついていないことを祈るぞ。もし何か証拠でも見つけたら、絶対に許さんからな」

そう言い終えると、バッハは冷たく鼻を鳴らし、背を向けてヴィラを後にした。

雲夢雨はバッハの背中を見つめ、黒い瞳に冷たい光が走った。

バッハ、あなたは青城城の若き城主だからって、私があなたの言うことを聞くと思っているの？

私は葉淇を連れ去っただけじゃない。陸厲沉も奪い取って、葉淇を生きた心地もさせないわ。

待っていなさい。陸厲沉はいずれ私のものになるわ！

帝都。

陸厲沉がS国から戻ってきてから、ずっと沈んでいた。

S国を隅々まで探したが、葉淇の影も形も見つからなかった。

バッハでさえ葉淇の行方を知らないというのは、彼の心をさらに焦らせた。

誰もが知っているように、失踪期間が長くなればなるほど危険は増す。今、葉淇がどうなっているかわからない。

陸厲沉は考えれば考えるほど苛立ち、思い切ってめぐりあいバーに酒を飲みに行った。