しかし問題は、相手が犬を連れているようで、その犬がとても恐ろしいことだった。犬は人の体臭を嗅ぎ分けて、人の居場所を追跡できるのだ。
葉淇はそのことを思い出し、さらに速度を上げて逃げ続けた。
ワンワンワン、背後の犬の鳴き声がますます大きくなっていく。
葉淇は顔色を変え、逃げ惑いながら、枝を伝って一本の木に登った。
そのとき、Toyも葉鶴を連れてここまで追いかけてきた。
「ワンワンワン!」Toyは大木の周りをぐるぐると回りながら吠え続けた。
司徒靜は不思議そうに言った。「なぜここで止まるの?先に追いかけなさいよ!」
葉鶴は小声で言った。「シーッ、話さないで。あの女はきっとこの近くにいる。」
司徒靜は驚いた。「この近くに?」
彼女はこの周辺の茂みを全て見たが、葉淇の姿は見当たらなかった。
葉鶴は深刻な声で言った。「Toyは霊気のある犬だ。間違えるはずがない。ここで探し続けろ!」
葉鶴の声を聞いて、葉淇の心臓は高鳴った。
彼女は木の葉の中に全身を隠し、息を殺して、見つかることを恐れていた。
司徒靜もToyが吠える方向に沿って、あちこち探し回った。
しかし、かなり探しても葉淇の姿は見つからなかった。
「葉鶴、Toyが間違えているんじゃないの?ここには葉淇はいないわ。周りは全部探したのよ。」
「いや、まだ一箇所探していない場所がある。」
司徒靜は驚いた。「どこ?」
「あそこだ!」葉鶴は手を上げ、頭上の木の葉を指さした。
司徒靜は驚いた。「葉淇が木の上に隠れているって言うの?まさか!」
「何も不可能なことはない。Toyの鳴き声がその証拠だ。」
葉鶴は目を細め、木の幹に沿ってゆっくりと登っていった。
この木は斜めに生えていたので、登るのは難しくなかった。葉鶴はすぐに木の頂上に到達した。
彼は木の葉をめくり、赤い唇に笑みを浮かべた。「葉淇、やはりここにいたな。」
葉淇の体は緊張状態が続いていた。葉鶴が現れるのを見て口を開こうとした瞬間、めまいがして倒れそうになった。
葉鶴は素早く彼女を引き寄せ、枝につかまりながら彼女を抱えて下りていった。