第348章 ジェリーは溫倩の兄、溫傑だった

そして、ブラックウルフが蘇晚晴を連れて出ようとした時。

昭ちゃんが可愛らしい声で言った。「おじさん、あなたは良い人ですね。私たち、一緒に住んでもいいですか？」

擎ちゃんもこの時、声を上げた。「そうですよ、おじさん。今となっては、ここが一番安全で、私たちを守れる場所だと思います。」

蘇晚晴は驚いて固まった。

彼女はこの二人の子供のことを忘れていたのだ。

すぐに擎ちゃんと昭ちゃんの手を引っ張り、蘇晚晴は二人を睨みつけながら、声を潜めて言った。「ここでそんなことを言わないで、私と一緒に行きましょう！」

蘇晚晴はそう言いながら、擎ちゃんと昭ちゃんを連れて出ようとした。

しかし……

「待って。」

ジェリーが声を上げた。

彼は蘇晚晴と一緒に島にやって来た、冷静で可愛らしく、生まれながらの気品を持つ、明らかに普通の家庭の子供ではない二人を見つめた。

蘇晚晴に尋ねた。「この二人の子供は、どういうことだ？」

蘇晚晴はすぐに答えた。「この二人は道で拾った子供です。家族と喧嘩して家出したのか、乞食のような姿でいたんです。」

「可哀想に思って、私の側に置いていただけです。」

「私にも親族がいなくなったので、この子たちと助け合って生きていこうと思って……」

擎ちゃんと昭ちゃんは蘇晚晴の言葉を聞きながら、心の中で同時に反論の声が上がった。「乞食なのはあなたでしょう、あなたの家族全員が乞食です！」

そして昭ちゃんは蘇晚晴のでたらめな話を遮った。

可愛らしい顔を上げ、輝く瞳でジェリーをまっすぐ見つめながら、「おじさん、彼女の言うことを信じないで。私たちは決して乞食じゃありません！」

擎ちゃんも頷いた。

ジェリーに告げた。「私たちはS国の子供です。」

二人は蘇晚晴に誘拐されたとは言わなかった。今の状況が不明確で、ここがどんな場所なのかも全く分からなかったからだ。

もしもこの人たちが実は悪人だったら？

彼らの身分を知って、蘇晚晴以上に悪辣で、パパとママを脅すために利用したり、あるいは直接殺してしまったりするかもしれない。

蘇晚晴の言い分に従って、家出した子供ということにしておこう。

だから……

昭ちゃんは可愛らしさ満点で、人の心を溶かすような目でジェリーを見つめた。「おじさん、私たち家に帰りたいの。誰かにS国まで送ってもらえませんか？」