楚天心の気分は悪化の一途を辿っていた。
階下に駆け下りたとき、席牧白の車が見当たらなかった。
病院の入り口には常安だけが彼女を待っていた。
「牧白は?」彼を見て、楚天心は不思議そうに尋ねた。
常安は恭しく答えた。「社長は急用があって先に行かれました。楚お嬢さんをここでお待ちするようにと言われました。ですが、ご心配なく。運転手には連絡してありますので、お迎えの車がすぐに来ます。」
「彼はもう行ってしまったの?」楚天心は信じられない様子で聞いた。
「はい。」常安は頷いた。
楚天心の表情が一瞬にして酷く険しくなった。
席牧白は何も言わずに行ってしまい、昼食も一緒に食べず、彼女一人をここに置いて行ってしまったのだ!
彼女は夏星河というあの嫌な女のところで大きな屈辱を受けたのに、本来なら不満を言いに、告げ口をしに来たはずなのに、彼はこうして行ってしまった。