ハードディスクを手にしっかりと握り締め、蕭墨はようやく心が元の位置に戻ったような安心感を覚えた。
彼は苦労して立ち上がろうとしたが、全身に力が抜けるような感覚を覚え、喉には何時の間にか甘酸っぱい味が広がっていた。
彼は我慢して、もう少しで吐血するところだったのだ。
深呼吸をして、蕭墨は崔銘が去った方向を陰鬱な目で見やり、そして身を翻して素早くその場を去った。
どうあれ、彼はついに締め切り前に、彼らのソフトウェアを無事に提出することができた...
ただ、夏智の方はどうなったのか、彼が席牧白を見つけられたかどうかはわからない。
夏智の方は彼よりもスムーズに進んでいて、既に席牧白を見つけていた。
姉を救うために、彼はもはや何も気にせず、直接彼の先輩である唐俊廷に電話をして、席牧白の電話番号を聞き出した。
席牧白はすぐに人を寄越して彼を連れて行かせた。
夏智は常安についていき、広々とした豪華な休憩室に入った。中には席牧白一人だけが座っていた。
これが夏智が初めて正式に席牧白と向き合う機会だった。
高貴な男性がソファにだらしなく寄りかかり、顔には何の表情も浮かべていなかった。夏智が夏星河のいとこだと知っていても、彼は何の余計な反応も示さなかった。
まるで彼の前に立っているのが部下か、あるいは見知らぬ人であるかのように。
夏智は少し不安になった。あの時病院で、彼と姉は彼の好意をとても無礼に断ってしまった。
今回彼が仕返しをするかもしれない、助けてくれないかもしれない。
もしかしたら彼に会いに来るべきではなかったのかもしれない。姉は彼に会いに来ようとは思っていなかったのだから、彼が勝手な判断をすべきではなかった。
それに、彼らは既に離婚していたのだ。席牧白には彼らを助ける義務など全くない。落ち目の彼らを踏みつけないだけでもありがたいことだった。
しかし、彼は既に来てしまった。今さら引き返すこともできない。
「言いなさい。どうしても私に会いたがった理由は何だ」席牧白は低い声で淡々と尋ねた。
夏智は唇を噛みしめ、かすれた声で言った。「席さん、お邪魔して申し訳ありません。でも今は姉を救えるのはあなただけなんです。どうか彼女を助けてください」