第85章 神様が彼を救いに来た

お金はずっと良いものだった。

  一銭が英雄を困らせることもある。

  金があれば鬼も臼を挽く、金がなければ犬にも相手にされない。

  夏星河はかつてあんなに誇り高く、強かった人物だったのに、落ちぶれた時には同じように多くの苦労を味わった。ただ一つの理由で、お金がなかったからだ。

  今の蕭墨もそうだ。

  お金がないため、この数年間彼は数え切れないほどの苦労を味わってきた。精神障害のある姉を抱えているため、彼の生活の苦労は想像に難くない。

  ただ彼の姉、蕭琳がショックを受けて、うっかり古ぼけたボロボロの家を燃やしてしまったため、家主に2万元の修繕費を払うよう求められ、この2週間、彼は2万元のために頭を悩ませ、あらゆる方法を考えた。

  さらには、強盗をしようと考えたり、多くの不正な金儲けの方法を考えたりした。

  絶望した時には、自殺しようとさえ思った。

  こんなに貧しく、希望の見えない人生、生きている意味があるのだろうか。生きていてもただ苦しみ、絶望するだけだ。精神的苦痛に耐える姉も、きっとこんな人生は望んでいないだろう。

  蕭墨は本当に、もしお金を稼ぐ方法が見つからなければ、姉と一緒に自殺しようと考えていた。

  しかし彼は思いもよらなかった。こんなに絶望していた時に、天から貴人が降りてきて彼を救ってくれるとは。

  こんな場面を、子供の頃に何度も想像したことがあった。

  幼い頃に両親を亡くし、幼い姉が苦労して彼を育ててくれた。あの頃、姉弟二人の生活は非常に苦しかった。

  お腹をすかせ、あらゆる絶望的な時に、彼は神様が突然現れて彼らを救ってくれることを空想していた。

  しかし天から餅は降ってこない。貧しい人はみな神様に救われることを空想しているが、神様はそんなに手が回らない。

  だから次第に彼も理解した。人は自分を頼るしかない。どんなに辛く、苦しくても、自分を頼るしかないのだと。

  誰も他人を助ける義務はない。助けを待っている人は、きっと天に見捨てられるのだと。

  だから絶望した時、もう誰かが助けに来てくれることを空想することはなかった。たとえ死の一歩手前まで来ても、誰かの助けを求めることはないだろう。