第170章 楚天心との婚約破棄!

しかし楚天心は夏星河がただ強がっているだけで、高慢ぶっていると思っていた。

  実際彼女の心の中はきっと死ぬほど辛いはずだ!

  夏星河が今この瞬間感じているであろう怒り、屈辱、苦痛を想像すると、楚天心は思わず大声で笑い出したくなった。

  もちろん、決して嘲笑うようなことはしないが、顔に浮かぶ明るい笑みは隠しきれなかった。

  「そういえば牧白、夏さんを呼んだ理由は何?」楚天心はようやく親切心を発揮し、慈悲深く夏星河に少し注目を向けた。しかも意図的によそよそしく「夏さん」と呼んだ。

  この質問には、席の母たちも答えを知りたがっていた。

  ちょうどそのとき、ウェイターも料理を全て運び終えた。

  「皆様、ごゆっくりお召し上がりください。何かございましたら、ベルを鳴らしてお呼びください」ウェイターは笑顔で退室し、すぐにドアが閉まった。個室には7人だけが残された。

  席牧白は楚天心の言葉に答えず、ワインボトルを手に取り、自ら両親と楚天心の両親のグラスにワインを注いだ。

  皆は彼の行動に少し戸惑いを感じた。

  しかし、彼らは何か不自然なことがあるとは気づかなかった。結局、席牧白が彼らにワインを注ぐのは敬意の表れだったからだ。

  「さっきは天心がお茶を注いで、今度は牧白がワインを注いでくれるなんて」楚おとうさんは冗談めかして言った。

  席ちちは軽く笑って言った。「当然のことですよ」

  席牧白は年下で、しかも楚天心と婚約しているのだから、彼らにワインを注ぐのは当然のことだった。

  しかし、席ちちの心の中にはまだ少し疑念があった。他の人は席牧白をよく知らないかもしれないが、彼はこの息子をよく知っていた。

  今日こんなに厳かに彼らを食事に招き、夏星河も呼び寄せ、さらに自ら彼らにワインを注ぐなんて、何か変だと感じずにはいられなかった。

  何が変なのかはわからないが……

  席牧白が何をしようとしているのか、見守るしかなかった。

  ワインを注ぎ終えると、席牧白はグラスを手に立ち上がり、夏星河の席の方へ歩み寄り、彼女の隣に立って他の人々に向き直った。