席牧白は善人でも信心深い人でもなく、彼は思いのままに行動し、他人の感情など全く気にしない。
今日の楚家への対応は、実際のところ丁寧な方だった。
もし昔の事件の首謀者が彼の母親でなければ、婚約破棄だけで済まなかっただろう。
彼らが分別があれば、面子を保つために賢明に婚約破棄を受け入れるべきだと思っていた。
しかし彼らは賢くなく、欲深く彼を支配しようとしている……
彼らは本当に、席牧白が楚天心と婚約していたから彼らに借りがあり、道徳で非難されるべきだと思っているのか?
残念ながら、この婚約は最初から道徳的な態度で結ばれたものではなかった!
当然、彼も今は遠慮する必要はない。
たとえ楚天心が何も間違ったことをしていなくても、彼は同じように婚約を破棄するだろう。
彼は愛していない妻を家に迎えたくないのだ。
この退屈な人生で、彼はようやく興味を持てるものを見つけたので、適当に済ませたくないのだ。
両家の和を乱し、誰かを傷つけることなど、彼は全く気にしていない。
今拒否する方が、将来後悔するよりもいい。
それに、彼にはもともと強引に何でもしたいようにする資本がある。
だから彼は喜んで夏星河のために正義を取り戻す。誰も如何ともし難い。
席牧白の強引な態度は、言葉にしなくても楚天心たちにも伝わっていた。
この瞬間、楚天心は自分が席牧白を理解していなかったことに気づいた。
彼女は彼が話しやすい人だと思っていた。ただ性格が冷淡で、人に感情を抱くのが難しいだけだと。
今になって彼女は理解した。彼は本当に冷血な人間なのだと!
彼の冷血さは、彼女に対してさえそうなのだ。彼女が彼を十数年知っていて、婚約していても関係ない。
こんな冷血な人に対して、楚天心は現実を見極め、適切に手を引くべきだった。
しかし、彼女には手放せなかった……
席牧白の持つすべてを、彼女は手放せなかった。権力、財産、地位、容姿、彼のすべてを、彼女は諦められなかった。
彼を失うことを考えると、全世界を失うかのように怖かった。
しかし席牧白はすでに婚約破棄を決めていた。彼女にはもう何も挽回する術がなかった。