第173章 すでに気にかけている

席牧白のこの言葉は、突然全員を驚かせた。

  夏星河さえも彼を一瞥した。

  彼らは、彼がこれほど夏星河を重視していたとは思いもしなかった……

  楚天心の体はさらに揺らいだ。

  もし席牧白が彼女のすべてを否定するのなら、彼女はまだ耐えられるかもしれない。しかし、席牧白が夏星河を重視することは、彼女には完全に受け入れられなかった!

  彼女は席牧白が彼女を愛さなくてもいいが、他のどんな女性にも関心を持ってほしくなかった!

  彼は誰も愛さず、誰にも関心を持たないのではなかったのか?

  もしかしたら彼はずっと夏星河を気にかけていたのだろうか……

  この可能性を考えると、楚天心は世界が崩壊し、底なしの深淵に落ちて二度と希望が見えなくなるような感覚に襲われた。

  「違う……」彼女は否定的に首を振った。自分に言い聞かせているのか、それとも席牧白を説得しようとしているのか分からなかった。「牧白、あなたは彼女を愛していないわ。ずっと愛していなかったはず!どうして彼女を気にするの?もし気にかけていたら、どうして離婚したりするの?だから彼女はあなたの心の中で全く重要じゃないはず!」

  席牧白の眼差しが一瞬にして深く複雑になった。

  以前は夏星河を愛していなかったが、だからといって彼女を重視していなかったわけではなく、尊重もしていなかったわけではない。

  彼は彼女を妻として尊重していた。ただ愛がなかっただけだ。

  しかし今は……おそらく彼はすでに気にかけ始めていた……

  ただし、これらのことを席牧白は彼らに説明する価値すらないと思っていた。

  彼はただ低い声で言った。「とにかく言うべきことは言った。君たちがどう思おうと、この正義は夏星河に返さなければならない。私は対外的に、二つの家族の共同決定による婚約破棄だと発表する。それに、今からは夏星河の身分を覚えておいてほしい。たとえ離婚したとしても、彼女は私の息子の母親だ!」

  「いやー」楚天心は突然飛びかかり、彼の腕をつかんで泣き叫んだ。「牧白、私は婚約を破棄したくないわ。私が間違っていた。私を責めてもいいから、とにかく婚約は破棄したくない!あなたの言葉はすべて怒りからだってわかったわ。私はもう自分の過ちに気づいたから、こんな風に私を扱わないで?」