仕事を終えた夏星河が実験棟から出てきたとき、席牧白の高級車が近くに停まっているのが見えた。
背の高い男性が純手作りの白いシャツを着て、車のボンネットに寄りかかりながらくつろいでいた。横顔の輪郭が深みのある。
夕日の光が彼の体を包み込み、顔の半分が影に、半分が柔らかな薄金色の光の中にあり、鼻筋がさらに高く見えた。
長く濃い黒い睫毛は、まるで羽ばたこうとする黒い蝶のよう。
夕日は彼の完璧な肌をも引き立て、全身から生まれながらの貴族の雰囲気を醸し出していた。
心理的に強靭な夏星河でさえ、彼を一目見た瞬間、我を忘れてしまい、神話のアポロを見たのかと思ってしまった。
後ろから出てきた2人の女性エンジニアは、驚きのため息を漏らした。
「すごくかっこいい……」
「この実験室に入った最大の特典は、時々彼を見られることよ!」
「彼を見たときだけ、自分が女性だと感じるわ!」
「私もよ!」
この実験室では、女性は男性として扱われ、男性は家畜のように扱われている……
夏星河は彼女たちの話を聞いて、何となく可笑しく感じた。
しかし、彼女が思わず少し笑みを浮かべた瞬間、席牧白がちょうど顔を向け、黒く深い瞳が彼女の目と直接合った。
すると、彼の口元に悪戯っぽくも魅力的な、くつろいだ甘やかすような薄笑いが浮かんだ。
「ダメ、気絶しそう!」
「どうしよう、おばさんの乙女心が爆発しそう!」
「私、死にそう!」2人の女性エンジニアは興奮のあまり声が震えていた。
彼女たちの気持ちが全く理解できない夏星河は、少し呆れた気分になった。
席牧白はただ顔が良いだけなのに、彼女たちは大げさすぎるんじゃないか……
「初日の仕事は大変だった?」席牧白は既に彼女の前に来て、低く笑みを含んだ声で尋ねた。
夏星河の気のせいかもしれないが、彼女を見る彼の目つきが、さらに……優しくなったように感じた。
まるで彼女に対して非常に慎重に接しているかのようだった。
席牧白がいつ誰かに優しく慎重に接したことがあっただろうか?
普段は紳士的で親しみやすい態度を見せていても、骨の髄まで冷淡なのは彼女がよく知っていた。
だから、これは間違いなく彼女の気のせいだろう……