夏星河はすぐに病院を出て、車に乗り込んだ。車を発進させようとしたその時、席牧白からの電話がかかってきた。
「僕たちはもう食事店に着いたよ。君は出発した?」席牧白が低い声で尋ねた。
「今、出発しようとしているところだよ。すぐに到着するから。」
「わかった。気をつけて来てね。」席牧白は口元を緩めて電話を切った。すると向かい側に座っている霖ちゃんが首元の蝶ネクタイを整えているのが目に入った。
その小さな男の子は今日、高価そうな黒のスーツを着ていた。
髪にはワックスまでつけていて……
ピカピカの革靴を履いて、まるで小さな王子様のように着飾っていた。
席牧白は可笑しくなった。デートに行くのは自分なのに、どうして彼の方が自分よりも正装しているんだろう?