「もうないわ」夏夢は否定した。
夏星河は鋭い眼差しで彼女を見つめた。「本当にないの?」
「ないわ……」夏夢はまだ首を振って否定したが、夏星河が何かを見抜いているような気がしてならなかった。
夏星河はこの質問を続けず、代わりに尋ね返した。「でも、葉深が欲しがっているものはメモリーセルじゃないんじゃないかな?」
夏夢の表情が一瞬硬くなった。
「葉深はメモリーセルのことなんて全然知らないはずだ。彼が君に求めているのは別のもの、メモリーセル以上に重要なものだ!」今度の夏星河の口調は非常に断定的だった。
夏夢は顔色が青ざめ、手のひらに緊張で汗をかいていた。
しかし彼女はまだ何も言わず、頑として口を閉ざしたままだった……
夏星河は彼女のこの様子を見て、もう無理強いはせず、ただ淡々と言った。「最後に二つ質問する」
「何?」
「実は最初、君は私の記憶を完全に消し去るつもりだったんじゃないか?」
ドーン——
夏夢は彼女を怪物でも見るかのように見つめた。この点をどうやって知ったのか?!
彼女は絶対に知るはずがないのに!
夏星河はこの点を想像するのは確かに難しかったが、彼女は夢を見た。自分が死ぬ夢を。
だから最初、夏夢はお互いの記憶を交換して彼女の記憶を存続させるつもりではなく、完全に消し去るつもりだったのだ。
消し去ってこそ、夏夢が暴かれる可能性が消えるのだから。
記憶を交換するのは、まるで自分に時限爆弾を仕掛けるようなものだった。
だから最初、夏夢は絶対に彼女を抹殺するつもりだったはずだ。
ただ、なぜか考えを変えたのだろう……
そして今の夏夢の反応を見ると、夏星河の推測は正しかったようだ。
この点を確認して、夏星河の雰囲気はさらに冷たく氷のようになり、まるで彼女の周りが真空になったかのように、あらゆる生き物や音が消えてしまいそうだった。
しかし彼女は怒りを爆発させることなく、その静かでゆったりとした声で質問を続けた。「二つ目の質問。スターリバー計画について聞いたことがある?」
「……」夏夢はすでに驚きで見開いていた目を、もう一度大きく見開いた。
夏星河はすべてを確認した。彼女が何も答えなくても。