彼は少し黙ってから言った。「これは希少金属なんだ」
「金属?」夏星河は少し驚いた。
彼女は手にしているブラックボックスを注意深く見つめ、確かにこれは金属のように見えた。
しかし、彼女の知っている金属とは全く違うものだった。
なぜなら、とても軽かったからだ。最初は中が空っぽだと思ったが、検査してみると違っていた。
この物質が一体どんな性質を持っているのかさえ分からなかった。
まさか、希少金属だったとは。
「どんな金属?」夏星河は再び尋ねた。
「言っても分からないよ。なぜ私がこれを手に入れたいのかも、聞かないでくれ。言えることはこれだけだ。それ以上は答えられない」
「私が持っていることを、どうして知ってたの?」夏星河は更に尋ねた。
葉深は口元を歪めて、「それも知る必要はない。とにかく、これはあなたには必要ないもので、私には必要なものだということだけ分かっていればいい」
「あなたにとってただごとじゃない重要性があるんでしょう?」夏星河は冷笑した。「葉深、はっきり説明しないなら、渡さないかもしれないわ」
しかし葉深は笑い出し、彼女の脅しを全く恐れていなかった。
「夏夢、渡さなくても私は何とかして手に入れる。でも、私から話を引き出そうとしても無駄だ!だから脅しは効かないよ」
そう言うと、彼はスーツを整えながら立ち上がって言った。「離婚したくないみたいだね?それでもいい、このまま引き延ばそう!今すぐ警察署に行って、あなたと席牧白の不倫を告発してやる。席家があなたのせいで面目を失って、まだあなたを守ってくれるかどうか見物だ」
冷笑いながらそう言い終えると、葉深は何も恐れることなく立ち去ろうとした。
「葉深、席家の報復が怖くないの?」夏星河は冷たく言った。
葉深は振り返って大笑いした。「むしろ来てほしいところだ。あなたたちの弱みを掴めないかと思っていたところだからね!夏夢、私は今や何も失うものがない。それが何を意味するか分かる?」
夏星河は冷ややかに彼を見つめたまま答えなかった。
葉深はゆっくりと言葉を吐き出した。「つまり、裸の人間は服を着た人間を恐れないということさ」
「……」
「報復したければどうぞ。誰がより残酷か、見てみようじゃないか!」
「やっぱりあなたは最低ね」夏星河は淡々と言った。