彼女は確かにエネルギーブロックなんて気にしていなかった。葉深だけがそんなに気にしていたのだ。
命と引き換えにできるなら、迷わず差し出すつもりだった。
でも問題は、自分でもどこにあるのか分からないということだった。
男は黙って彼女をしばらく見つめ、可笑しそうに言った。「君は演技が上手いのか、本当のことを言っているのか。見抜けないな」
「疑い深い人にとって、真実はいつも嘘に見えるものです」夏星河は淡々と答えた。
男は一瞬固まった。
彼女の言葉は鋭かった。
しかし、それでも彼女を信じることはできなかった。
「もし君が持っていないのなら、君の存在価値はないということだ!」男は突然拳銃を取り出し、装填して、冷たく彼女の心臓に向けた。「この一発で、元夫の元へ送ってやろう」
「あいつの元へ?ふざけないで!」夏星河は冷笑した。
死の恐怖に怯えると思っていたのに、彼女は相変わらず冷静だった。
男の言葉を訂正する余裕すらあった。
薄暗い部屋の中で、男は彼女の顔ははっきりと見えなかったが、その瞳だけが異常に輝いていた。
男は思わず惜しむように言った。「普通の女性じゃないようだね。葉深のような男と結婚するなんて勿体なかった。今や彼のせいで命を落とすことになるなんて、更に無駄死にだ。そう思わないか?」
「本当に無駄でしたね」意外にも彼女は男の言葉に同意した。
男は興味を示し始めた。「だから場所を教えてくれれば、死ななくて済むんだ」
「本当に知っていたら、言われなくても命と交換していますよ」夏星河は軽蔑したように言った。「あんなものは私には何の価値もありません」
「確かに君には価値がないかもしれないな……」男は頷いて同意した。
しかし、この一言で夏星河は一つの推測を確信した。
それは、彼は夏夢もエネルギーブロックを持っているということを知らないということだ。
彼は葉深が持っていることだけを知っていて、夏夢も持っているとは知らなかった。
この点から判断すると、おそらく彼は夏夢と葉深の父親のことをよく知らないのだろう。
もしかしたら、彼の両親はスターリバー計画とは無関係なのかもしれない。
ただ偶然スターリバー計画のことを知り、葉深が情報を漏らしたせいで、葉深のところまで辿り着いたのだろう。
葉深のような人間は本当に愚かだった。