「でも、チャールズは災いを転じて福となしたわ。フィリップが彼の人柄を気に入って、今では大統領のボディーガード長になったの」と黎亞は嬉しそうに言った。
ずっと耳を立てて盗み聞きしていた夏智は突然驚いて叫んだ。「あなたたちがずっと話していたフィリップって、Y国の新しい大統領なの?」
山禾たちは自然に頷いた。「そうだよ」
「大統領と知り合いだったなんて。ということは、姉さんも知り合いってこと?」言い終わって、夏智は確認するように夏星河を見つめ、目には信じられない様子が浮かんでいた。
黎亞はくすくすと笑った。「星河は知り合いどころか、フィリップに妹として認められているのよ」
「えっ?」夏智は一瞬で頭が真っ白になった。
どういう意味の妹なのか、理解できなかった。
「姉さん、彼らの言ってることは本当?」
夏星河は淡々と頷いた。「本当よ。ただ、私は言う必要がないと思っただけ」
夏智は突然叫び出した。「言う必要あるでしょ!僕がフィリップの弟になったなんて、どうしてこんなに長く隠してたの!」
夏智、黎亞、山禾、オオカミさん、柯瑞:「……」
いつの間に彼がフィリップの弟になったんだ?
夏智は彼らが理解できない様子を見て、彼らの知能を心配した。「姉さんがフィリップの妹になったんだから、僕はフィリップの弟になるでしょ?」
「……」この論理は、なんだか変な道理がある。
「僕がフィリップの弟になったなんて、ハハハ、僕は大統領の親戚だ。お父さんに教えに行かなきゃ、この良い知らせを絶対に知らせないと!」言い終わると、夏智は振り返って走り去った。
山禾は目を瞬かせた。「星河、君の弟は何歳?18歳?なんか、知能に問題があるように見えるんだけど」
黎亞の三人は同意して頷いた。
彼らも同じように思っていた。
夏星河:「……」
彼女の弟は、確かにちょっとおバカで可愛い。
しばらく歓談した後、山禾たちは夏星河と本題について話そうとした。
「書斎で話しましょう」夏星河は立ち上がり、彼らを書斎へ案内した。
書斎に着くと、みんなは先ほどまでのふざけた様子を一変させ、真剣な表情になった。
夏智を怖がらせないように、彼らはずっと意図的に危険な雰囲気を抑えていた。
今になって、やっとY国にいた時と同じ様子になった。
一人一人が鋭い眼差しを持ち、その気配も鋭利だった。