第607章 彼が来る!

席おじいさんの心は暗く沈み、声も低く響いた。「分かった。すぐに彼女を救う方法を考える。何か情報があったら、また連絡してくれ」

「はい」向こう側の柯瑞が応答した。

電話を切ると、席おじいさんが大統領に連絡しようとした矢先、また一本の電話が入ってきた。

病院からの電話だった。

席おじいさんは一瞬固まり、席牧白にも何か起きたのではないかと心配になった。

緊張しながら電話に出た。

しかし、向こうからは醫者の喜びの声が聞こえてきた。「席おじいさま、おめでとうございます。席ぼっちゃんが目を覚まされました!」

席おじいさんは驚喜して立ち上がった。「何だって?」

「席ぼっちゃんが目を覚まされました。たった今のことです。ついに目覚められました!」

……

席牧白が目を覚ました。

これは席家にとって、この上ない朗報だった。

席おじいさんたちはすぐに病院に駆けつけ、確かに目覚めた彼の姿を目にした。

目覚めたばかりだというのに、席牧白の眼差しは漆黒で鋭く、ベッドの頭部に寄りかかり、まるで一眠りしただけのように元気そうだった。

まるで、この数ヶ月間、死の淵をさまよっていなかったかのように。

その様子を見た席の母は、すぐに涙を流した。「牧白、やっと目覚めたのね!お母さんはずっと待っていたのよ、本当に辛かった」

席牧白の目は、彼らの姿を素早く見渡したが、夏星河の姿が見当たらなかった。

醫者から夏星河は無事だと聞かされていても、本人を見ていない以上、やはり心配だった。

「夏星河はどこだ?」席牧白は口を開くなり、低い声で尋ねた。

席おじいさんは一瞬困った表情を見せ、重々しく言った。「お前が目覚めたからには、知らせておくべきだろう。たった今、彼女に何かあったんだ」

席牧白の瞳孔が急激に開いた。声も冷たくなった。「何だって?」

「牧白、この間、多くのことが起きたんだ……」そして、席おじいさまは最近起きた出来事を全て話した。

要点を話し終えると、彼は嘆息して言った。「私たちにも選択の余地がなく、彼女一人をA市に行かせるしかなかったんだ。しかし思いもよらず、先ほど彼女が突然姿を消してしまった。誘拐されたのではないかと疑っているが、心配するな。私はすでに大統領に連絡を取り、すぐに捜索隊を派遣すると約束してくれた」

それでも、席牧白は心配で仕方がなかった。