半日ほど手探りしていたが触れなかった。突然、男性の手に掴まれた。「手を離せ」
温かく柔らかい手のひら。
彼女は息を呑んだ。
男性の命令を聞いて、彼女は手を離した。シートベルトが留まった。
俞晚晚は横を見た。赤信号で止まっていたが、彼女が見た時には青信号に変わっていた。
彼女は蘇言深の横顔の大半を辛うじて見ることができた。表情は冷たく、厳しかった。
とても怒っている、とても怒っている。
抑えているように見えた。おそらく彼女を家に連れ帰って、後で問い詰めるつもりだろう。
もういい、どうせこんなに惨めな状況なのだから。
彼女の痔はめったに症状が出ないが、一度出ると命がけだった。痛みで虚脱状態になり、車のドアに寄りかかって眠くなった。
車が止まって初めて目が覚めた。目を開けると、病院の入り口にいることに気づいた。どこの病院かは分からなかった。