第211章 おばが最も好きなのは卵黄です

彼は蘇言深の皿に卵がないことに気づいた。彼と俞晚晚の皿にはあるのに。

  ちょうどそのとき、翁萍が外から入ってきて、にこやかに俞小滿の疑問に答えた。「小満さん、先生は卵黄にアレルギーがあるの」

  俞小滿はアレルギーがあるというのは好きじゃないという意味だと思い込んだ。「僕も卵黄は好きじゃないけど、白身は食べられるよ。黄身は全部おばに上げるよ。おばは卵黄が大好きだもんね」

  俞晚晚は口の中の卵黄をまだ飲み込めずにいた。飲み込もうとして吐き気を催すほどだった。彼女は俞小滿に白眼を向けた。

  彼女は全然好きじゃなかった。この小僧に食べ物を無駄にしないという手本を示すためでなければ、朝食のたびに彼の後について卵黄を食べたりしないのに。

  蘇言深は俞晚晚が俞小滿に向けた白眼を捉えた。彼の目に狡猾な笑みが浮かんだ。

  「そうか」

  うなずきながら、俞小滿に軽く返事をした後、彼は手を伸ばして俞晚晚の器から卵を取った。

  白身をむいて自分の口に入れ、黄身を俞晚晚の皿に戻した。

  俞晚晚は蘇言深が故意にやっていると確信した!

  彼女は呆れて彼を見た。

  隣の俞小滿が卵黄を取り上げ、俞晚晚の口元に運んだ。「おば、食べてよ。おばは卵黄が一番好きでしょ?」

  俞晚晚:「……」

  彼女は、この父子が結託して自分を困らせているような悲しい気持ちになった。

  彼らが知り合ってまだ数日なのに?

  あれほど衝突を繰り返したのに、それでもこんなに簡単に仲良く過ごせるなんて、これは血縁……

  俞晚晚は自分の思考を止めた。

  口を開けて卵黄を食べ、急いで飲み込もうとして詰まらせた。

  目尻と鼻が同時に赤くなった。

  彼女は急いでコップを手に取り、背を向けて大きく水を飲んだ。

  今日は出張がある。田如山が特に言い付けていた。10時の飛行機だから、会社に早く着かなければならない。小満を蘇言深と二人きりにはできない。

  小満は時間になったら薬を飲まなければならない。

  これらは全て蘇言深に任せられないことだった。

  俞小滿は靴を履き替え、玄関で焦りながら蘇言深を待っていた。