第254章 今生彼女は罪人

しかし、人に止められた。「次のエレベーターに乗ってください。これは満員だと分からないんですか?」

  「わかりました」俞晚晚は肩をすくめた。

  もともと彼女もあまり押し込まれたくなかった。

  思いがけず、このとき許昭が来た。「俞さん、まだ乗っていないんですか」

  俞晚晚は許昭の声を聞いて少し驚いた。彼は地下駐車場に行ったはずなのに、どうしてここでエレベーターに乗るのだろう?

  彼女は振り返って許昭を見た。許昭は彼女に笑顔で声をかけた。「私と一緒に社長専用エレベーターに乗りましょう」

  さっきのエレベーターのドアがもう閉まりそうだったが、中の人が許昭の言葉を聞いて、ドアをまた開けた。

  中年の女性が許昭を見て責めるように言った。「許アシスタント、あなたは自分が社長みたいな振る舞いをしていますね。まさか社長専用エレベーターに乗るなんて」

  許昭は言った。「蘇社長が専用エレベーターに乗ることを許可してくれました。緊急の場合は自分で判断するようにと言われています」

  中年の女性は眉をひそめた。「それでも俞晚晚を連れて行くことはできないでしょう。明霜さんが知ったらどう説明するつもりですか。それに蘇社長が言ったのは緊急の場合だけです」

  許昭も眉をひそめた。「俞さんはもう遅刻しそうです。これは緊急事態じゃないですか?」

  「遅刻」という言葉を聞いて、そのエレベーターの中の人々は慌てた。「陳主任、早くドアを閉めてください。遅刻しそうです」

  一人の俞晚晚のために一か月の皆勤手当を失うのは価値がない。

  エレベーターのドアが閉まった。

  「俞さん、こちらに乗ってください」

  許昭は社長専用エレベーターのドアを開け、俞晚晚を招いた。

  俞晚晚は躊躇せずに中に入った。

  エレベーターの中はいつものようにきれいで、会社の規則や広告などは何もなかった。

  俞晚晚は動かずに立っていた。まばたきする間もなく15階に到着した。

  エレベーターのドアが開くと、許昭は手でドアを押さえ、恭しく俞晚晚にうなずいた。「俞さん、到着しました」

  「ありがとうございます」

  俞晚晚はお礼を言ってエレベーターを出た。