第370章 蘇言深は香香を救った

俞晚晚が降りると、十数台のバイクと、蘇言深のナンバープレートA99999の黒いベントレーが目に入った。

彼女は驚いた。

しかし、蘇言深がなぜここにいるのか考える余裕もなく、香香の泣き声を頼りに人を探した。

十数人の若者と蘇言深が、二つの勢力に分かれていた。

金時景は花柄のシャツを着て、香香を腕に抱え込み、彼の後ろには同年代の若者たちが立っていた。

蘇言深の側には年承が立ち、金時景と対峙していた。

俞晚晚は深く考えず、香香を慰めることだけを考えて、金時景に向かって叫んだ。「何か問題があるなら私に向かってきなさい。私の娘を放してください。」

俞晚晚を見た金時景は、嫉妬の怒りを燃やしながら、「秦悅、よくもそんな大胆なことを。俺がお前にあれだけ尽くしたのに、こっそり外で子供を産んでいたのか。」

彼は血走った目で、香香の腕をさらに強く掴んだ。

小さな女の子の顔は赤くなり、泣き声はかすれていた。

俞晚晚も心配で泣きながら、「香香」と呼んだ。

俞晚晚の涙を見て、金時景はさらに狂ったように怒鳴った。「言え、この私生児は冷擎のなのか！」

俞晚晚は足がすくんで、首を振った。「違います、説明させて、違うんです……」

突然、一人の男が金時景に向かって突進した。

金時景は俞晚晚に注意を向けていたため、蘇言深に気付かず、腹を蹴られ、小さな女の子を奪われた。

すぐに後ろについてきた年承に投げ渡し、「彼女を連れて行け」と言った。

二人は息の合った連携を見せた。

俞晚晚はほっとして、香香を抱きに走り寄ろうとした。「香香」

突然、彼女は金時景が長い鉄の棒を持って蘇言深に向かって振り下ろすのを見た。

「気をつけて」

彼女が驚いて警告すると、蘇言深も気付いて腕を上げ、鉄の棒を防ぎ、頭を守った。

鉄の棒が彼の腕にしっかりと当たり、「ドン」という音が鳴った。俞晚晚は目を見開いて、「蘇……」

「言深」という言葉は喉に詰まって出てこなかった。

金時景がまた鉄の棒を振り上げようとしたが、蘇言深はすでに十分な防備を整え、年承も香香を下ろしていた。

「ママ」

俞晚晚は走り寄って香香を抱き上げた。

年承はボディーガードも兼ねていたため、金時景の仲間たちは明らかに彼の相手ではなく、すぐに制圧された。