第422章 香香のお父さんとは一目惚れだった

蘇言深は振り向いて、視線を向け、軽蔑的な眼差しを彼らに送った。

俞晚晚は「……」

彼のこの忌々しい……勝負欲。

しかし、彼のその挑発的な眼差しに心を揺さぶられ、彼女自身も気づかないような憧れの色が目に宿った。

今は彼ら二人と、体育学校のカップルだけが残っていた。

体育学校の二人は確かに凄かった。五十回を超えても、その男子はまだ疲れた様子を見せなかった。

俞晚晚は蘇言深の状態がわからず、ちらりと見たところ、ちょうど彼が下がってきて、二人の視線が近距離で交差した。俞晚晚の心臓がドキッとし、目を見開いた。

緊張した様子から、蘇言深は彼女が唇をきつく結んでいるだろうと推測した。

彼は思わず軽く笑って、「何をしているんだ？」と言った。

魅力的な声と荒い息遣いに、俞晚晚は全身に電気が走ったような感覚を覚え、マスクが急に蒸し暑く感じられ、息苦しさを感じた。

「五十五回目、五十六回目……」

両チームともまだ諦める様子はなく、頑張り続けていた。

普段運動をしない司会者も驚嘆の眼差しを向け、「すごい、素晴らしい」と言った。

蘇言深は全身汗だくで、小さな汗の粒が大きな滴となっていた。

息遣いもますます荒くなっていった。

もう一組の男子も一回ごとに声を出すようになっていた。

俞晚晚は蘇言深がもう限界に近いのを感じ取り、「蘇言深、頑張って」と。

ほとんど思わず口から出た言葉だった。

秦悅のような冷たい口調ではなく、優しい励ましの声で、その優しさの中に緊張と期待が混ざっていた。

蘇言深は一瞬驚き、完全に女性の瞳に視線を落とした。彼の額から汗が滴り、真っ直ぐに女性の目尻に落ちた。

彼女はまばたきをし、杏色の瞳が輝き、長い睫毛が蝶の羽のように揺れた。その瞬間、蘇言深は俞晚晚の姿を見た。「晚晚」

男性の体が下がり、顔が急に近づき、二人の鼻先がマスク越しに触れ合った。

まるで二人だけの静かな世界に入ったかのように、自分の心臓の鼓動が聞こえるほど静かだった。「ドクドク」と。

俞晚晚は緊張して服をぎゅっと握り、目を見開いていた。

観客の目にもその光景は一時停止したかのように映った。

一秒……二秒……突然騒がしい声が上がった。「キスして、キスして」