第470章 彼女の好きな人は聞飛

ようやく5分後、携帯の電源が入り、俞晚晚は通話履歴を確認すると、確かに蘇言深からの着信だった。

彼女は折り返し電話をしなかった。香香をどこに連れて行くにしても、彼女は絶対に同意するつもりはなかった。小満さんが彼の息子だと既にばれてしまったので、香香は絶対に隠さなければならない。

しかし30分経っても、蘇言深は来なかった。もしかしたら来ないのかもしれない。

……

この時間の月の光の下、雰囲気は徐々に熱を帯びていた。ステージ上の女性歌手はマスクをしていたが、蘇言深は一目で'秦くん'ではないと分かった。

彼は気づいた。秦悅であっても、一目で本人かどうか分かるということに。

それは彼女が俞晚晚にそっくりだからだろうか?

毎回見た感じですぐに分かる。

あの厄介者はどこに行ったのだろう。香香を連れて2階にいるのか?

蘇言深は2階を見上げながら、俞晚晚に電話をかけようと携帯を取り出した時、2人が2階から降りてきて、裏口の方向に向かうのを見た。

男は聞飛で、女性は黒い服を着ていた。間違いなければ、道で会った秦悅と同じ服装だった。

彼は悟られないように後をつけた。

聞飛のメルセデスGが月の光の裏口に停まっていた。車のドアまで来ると、後ろについてきた秦悅を振り返り、とても厳しい口調で言った。「前回、彼女のIDを勝手にホテルで使ったことは、私が早めに対処しなければ、彼女の存在がばれるところだった。今後は勝手な行動をとらないように。さもないと容赦しないぞ。」

女性の元々冷たい目がさらに暗くなった。

突然、聞飛の部下が秦悅の耳元に近づき、聞飛は眉をひそめ、一歩前に出て秦悅を抱きしめ、命令口調で耳元で言った。「私を抱きしめろ。」

秦悅は言われた通りに彼の腰に腕を回した。

聞飛は手を上げ、秦悅の頭に置き、優しく丁寧に彼女のポニーテールを撫でながら、「車に乗れ。」と言った。

そう言うと彼は秦悅の手を取り、二人で車に乗り込んだ。

蘇言深は聞飛の車が走り去るのを見て、外に出て道端に立った。

頭の中で先ほどの二人が抱き合っていた場面が繰り返され、目が次第に深くなっていった。

つまり秦悅が言っていた好きな人は聞飛なのか?

それは本当にクズだな……