第578章 喬社長、あなたの息子さっきすごく激しくキスしてきたわ

俞晚晚は急いでかがみ込み、もう一度香香を抱き上げようとしたが、蘇言深に抱きとめられてしまった。

蘇言深は片手で俞晚晚の腰を抱き、もう片手で彼女の顎を持ち上げ、抵抗する余地を与えることなく、唇を彼女の唇に激しく押し付けた。

俞晚晚は唇が切れそうなほど痛く、口の中に血の味が広がった。彼女は両手で蘇言深の胸を押し、必死に押しのけようとした。「んん...」

それでも香香のことが気になり、横目で彼女を見ていた。

意外なことに、さっきまで泣き叫んでいた香香は、蘇言深が俞晚晚にキスをしているのを見て、一瞬で笑顔に変わり、涙を浮かべながら拍手をした。

「おじさんとママがチュッチュ」

俞晚晚：「...」

香香は泣き止み、怖がることもなくなった。彼女はほっとした。

男の両手が彼女をきつく締め付け、もう少し力を入れたら息ができなくなりそうだった。

「蘇言深、何をしているの！」

突然、入り口から喬慧喜の怒鳴り声が響いた。

蘇言深の乱暴な動きは突然止まり、唇は俞晚晚の唇から離れたが、両手はまだ彼女の腰から離れなかった。

まず頭を回し、眉をひそめて入り口を見た。

喬慧喜は蘇言深の車椅子のハンドルを離し、怒りながら蘇言深と俞晚晚の方へ突進してきた。

蘇言深は反射的に俞晚晚を後ろに引き、大きな体で俞晚晚の前に立ちはだかった。

彼女を守るために。

喬慧喜の振り上げた手は俞晚晚に当たらず、蘇言深の頬に激しく当たり、「パン」という鋭い音がリビングに響き渡った。

俞晚晚の心臓が痛く締め付けられた。

彼女は目の前の男の大きな体を見上げた。その威厳のある姿に、思わず安心感を覚えた。

でも今この瞬間、彼は秦悅を守っているのだ。喬慧喜と対立している秦悅のために。

以前は彼からこんな露骨な保護を受けたことはなかった。この立場が少し羨ましく感じた。

俞晚晚はそう考えながら、自嘲的に笑みを浮かべた。

喬慧喜は先ほどの蘇言深が俞晚晚を抱きしめてキスをしていた場面を思い出し、蘇言深を叩いたことを少しも後悔していなかった。彼女は指で俞晚晚を指さしながら蘇言深に尋ねた。「彼女が誘惑したの？」

蘇言深は大きな声で答えた。「違います」