219.贅沢になった

実際、彼女は陸墨擎が一体何がしたいのか分からなかった。離婚寸前の二人が、夜中に同じ部屋にいるなんて、おかしくないのか?

  喬栩は陸墨擎という人間はクズだと思った。わざと彼女に逆らい、病気になってもゆっくり休ませてくれない。

  まあいい、ここにいたければいればいい。

  喬栩は彼を無視することにした。今は、めまいは少し軽くなったが、まだ体調は優れない。

  ベッドに横たわろうとした時、彼女は少し戸惑った。先ほど布団を汚してしまったことを思い出し、ベッドはめちゃくちゃになっていたはずだが、いつの間にか看護師が交換してくれたのだろうか?

  喬栩はそう考えながら、陸墨擎に一瞥をくれ、そして黙って横になった。

  陸墨擎という大きな存在がそこにいるため、喬栩は影響を受けやすかったが、体の自然な反応には勝てず、先ほどの騒動で更に疲れていた。

  横になってしばらくすると、彼女は眠りに落ちた。

  実際、陸墨擎は病室を出なかったものの、喬栩の休息を邪魔しないよう、あまり目立った動きをしなかった。

  しばらくして、喬栩の安定した呼吸が聞こえてきたとき、陸墨擎はようやく静かに彼女のそばに寄り、布団を引き上げて彼女を覆い、彼女の顔色を確認した。彼女がまずまず安らかに眠っているのを見て、やっと安堵のため息をついた。

  VIP病室の内装は豪華な家庭風を主体としており、治療に必要なもの以外に、家族や付き添いの人が寝るための2メートルの大きなベッドも別に設置されていた。

  しかし陸墨擎は喬栩が心配で、ベッドで寝ることはせず、病室にあった小さなリクライニングチェアを喬栩のベッドの横に引き寄せた。

  大柄な体を狭いスペースに押し込むのは快適ではなかったが、このように喬栩に近づくことで、より安心感を得られるようで、この程度の不快感は何とも思わなかった。

  彼は横向きになり、喬栩の眠る顔を見つめていた。まるで世界中に彼ら二人しか残っていないかのように。

  こうして隣にいる人の寝顔を見つめているだけで、かつてないほどの満足感を得られることに気づいた。

  見ているうちに、彼は突然眉をひそめた。喬栩との結婚生活3年間、こんな風に一緒に過ごしたことは一度もなかったことを思い出したのだ。