315.宋域と一緒でも悪くない

彼女は前に進み、一気に蘇柔を引き戻した。「お兄さんにそんなこと言って何になるの？自ら恥をかくだけよ」

　　プッ——

　　喬栩でさえ心の中で思わず笑ってしまった。蘇柔が陸昕瞳の言葉で顔をゆがめるのを見て、彼女は思わず陸昕瞳に親指を立てたくなった。

　　「行きましょう」

　　陸昕瞳は蘇柔を引っ張って、怒り心頭で陸氏を出た。道中、多くの人が二人を奇異な目で見ていて、陸昕瞳は自分がどれほど恥ずかしいか言うまでもなかった。

　　蘇柔はさらに怒りで顔をゆがめていた。陸昕瞳のこのバカ、さっきの言葉は何のつもりだ？

　　自ら恥をかく？

　　彼女は喬家の次女で、陸昕瞳に何も引けを取らないのに。

　　何が自ら恥をかくだ？

　　もし本当に宋域と結婚したいと思えば、陸昕瞳のような人に操られるだけの愚かな頭では、彼女に勝てるはずがない。

　　そう考えると、蘇柔の頭の中には思わず宋域の顔が浮かんだ。

　　陸墨擎には及ばないが、それでも一流の容姿で、宋家唯一の跡取りでもある。身分や背景も陸墨擎に引けを取らない。

　　残念ながら、陸昕瞳のようなバカに先を越されてしまった。

　　彼女は陸昕瞳を見て、このバカのどこがいいのか分からなかった。宋域は彼女をダーリンのように大切にしている。

　　もし宋域と……

　　蘇柔の頭の中に、突然そんな考えが浮かんだが、特に強くはなかった。

　　彼女は陸墨擎に多くの努力を注いできたので、簡単には諦められない。

　　喬栩が自分より良い暮らしをしているのを見たくない。

　　そう考えながら、彼女は先ほどの陸昕瞳への怒りを押し殺し、目を上げると、また楚楚とした可哀想な表情を作った。

　　「瞳瞳、もういいわ。墨擎はお姉さんと復縁する気満々だから、もう私たちを引き合わせようとしないで。私と墨擎は……縁がなかったってことにしましょう」

　　そう言いながら、彼女は目を赤くして、顔を別の方向に向けた。

　　陸昕瞳はさっきまで怒り心頭だったが、蘇柔が自分の夫を嫌っていると思うと少し気になっていた。しかし今、彼女のこの様子を見ると、心が柔らかくなった。

　　彼女はお兄さんにこんなに辱められたのに、どうして彼女を責められるだろうか。

　　自分の夫を嫌っていても構わない。少なくとも宋域に目をつけないということだ。