353.陸墨擎は終わった

「また8年前のこと？」

　　喬栩は眉をひそめた。陸墨擎が何度も8年前のことを持ち出してきたが、今度は顧君航も言及している。

　　あの日、陸墨擎が怒り狂って彼女を錦雲ホテルに連れて行き、その後の意味不明な会話を思い出すと、当時から何かがおかしいと感じていた。

　　しかし、陸墨擎が喬一の親権を奪おうとしていることで頭がいっぱいだったので、深く考える余裕がなかった。

　　今、顧君航がまたそれを持ち出したので、喬栩はその間に彼女が知らないことがあるのではないかと感じた。

　　「8年前って何？」

　　彼女は顧君航を見つめ、胸の中の違和感を押し殺して尋ねた。

　　顧君航は何か抑えているようで、何度か唇を動かしたが、言いかけては止めるばかりだった。

　　「顧さん」

　　喬栩は顧君航が言い出しかねている様子を見て、いらだちながら彼を呼んだ。

　　顧君航は彼女を見て、決心したかのように口を開いた。「8年前、あなたは彼の酒に薬を入れて、それから...」

　　顧君航は8年前に錦雲ホテルで起こったことすべてを喬栩に話した。話し終えるころには、彼は心の中で理解していた。

　　喬栩の目に浮かぶ衝撃が全てを物語っていた。

　　墨擎はもうだめだ。

　　顧君航は心の中で陸墨擎のために数秒間黙祷した後、ふと思った。8年前のことを話してしまったが、墨擎に申し訳ないのではないか。

　　しかし考え直してみると、話さなければ、この二人はいつまで経っても推測し合っているかもしれない。

　　こんなに感情知能の低い親友に出会って、顧君航も心が疲れると感じた。

　　「くそっ、陸墨擎のクズ野郎」

　　同じように聞いて呆然としていた夏語默が思わず罵った。同情的な目で喬栩を見て、さらに陸墨擎を罵ろうとしたが、喬栩の表情を見て、もう彼のことは言及しなかった。

　　栩栩はさぞショックが大きいだろう。

　　喬栩は確かに今、この件で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。この世界にこんなにドラマチックで信じられないような出来事があるとは知らなかった。

　　陸墨擎のそばで3年間苦しみながら待ち続けたのは、こんな馬鹿げた誤解が原因だったなんて。

　　彼は何も直接彼女に聞かずに、彼女を闇の中に置いたまま、3年間冷たくあしらっていたのか？

　　これは一体何なのか。