371.株式譲渡

目の奥に明らかな計算があり、腹に悪だくみを秘めた小狐のようだった。

  陸墨擎の唇の端が、それに合わせて微かに曲がり、目の奥に淡い笑みを湛えていた。

  電話の向こうの喬盛は明らかに不機嫌で、喬栩に話す口調も病んでいて冷たかった。

  「じゃあ、場所を決めましょう」

  そう言って、喬栩は電話を切り、笑みを浮かべて彼女を見つめる陸墨擎に視線を向けると、表情が一瞬凍りついた。

  陸墨擎の眼差しがあまりにも柔らかく、初めて彼に会った時の姿を見ているかのようで、彼女の心を揺さぶり、突然震えさせた。

  表情を整えて、彼女は口を開いた。「用事があって出かけなければならないの。誰かに来てもらって看病してもらってね」

  陸家には使用人が不足しておらず、陸墨擎の世話をするのは問題ないはずだった。今の陸墨擎の顔色を見ると、明らかに良くなっていたので、彼女はもうここにいる必要はないと思った。

  陸墨擎はすぐには答えず、ただ笑みを浮かべて彼女を見つめていた。しばらくして、ようやく「わかった」と一言言った。

  喬栩は彼が何を考えているのかわからなかった。彼の顔から視線を外すと、ドアを開けて病室を出た。

  背後でドアが閉まる音が聞こえると、陸墨擎の唇の端に浮かんでいた笑みがゆっくりと消えていった。

  彼女は明言しなかったが、彼は知っていた。彼女の「誰かに来てもらって看病してもらってね」という言葉は、今回出て行ったら二度と戻ってこないということを伝えようとしているのだと。

  彼は彼女を引き留めたかったが、その勇気がなかった。もし昨日彼がまた吐血して気を失わなかったら、彼女はおそらくとっくに去っていただろう。

  彼は知っていた。彼女を引き留めることはできないのだと。

  4年前と同じように、彼女が一度心を決めたら、彼を地獄に落とすことができるのだと。

  喬栩が外科病棟を出たばかりのとき、黒い伸長型のリンカーンがゆっくりと彼女の前に停まった。

  この車は喬栩にとって見慣れたものだった。陸おばあさまの専用車で、以前彼女が陸家にいた頃は、陸墨擎のベントレーよりもこのリンカーンに乗る機会が何百倍も多かった。

  喬栩はその場に立ち止まり、陸おばあさまが杖をついて車から降りるのを見ていた。彼女を見つけると、おばあさまの目が輝いた。「栩栩」