483.旦那様が全部勝ち取ってあげる

彼女はどうして初めて会った時、この人は口下手だと思ったのだろう？

これのどこが口下手なのだろう。

この口は饒舌すぎて飛んでいきそうだ。

陸墨擎は喬栩が笑うのを見て、一瞬驚きの表情を浮かべた。

妻は今までこんな風に笑ってくれたことがない、綺麗だ、そして……

陸墨擎は喉の渇きを感じ、急いで潤したくなった。そう思った次の瞬間、体が動いていた。

長い腕を伸ばし、喬栩の後頭部を掴んで、身を屈めて彼女の唇に強く口づけした。喬栩は信じられない様子で目を見開いた。

人前で、彼は体面も気にしないのか？

幸い陸墨擎はまだ体面を気にしていて、周りに人が多いことを知っていたので、思わず喬栩にキスをした後、すぐに彼女を放した。

喬栩の目から放たれる怒りの炎に対して、彼は余裕たっぷりに腕を組んで彼女を見つめ、目には穏やかな笑みが浮かんでいた。

「では、このグループの競技順位を発表します……」

主席台の上で、担当者は陸墨擎を見ながら、複雑な表情を浮かべていた。

このビッグボスがこんなに堂々と規則違反をしたのだから、参加資格を剥奪すべきだが……彼にはその勇気がない。

彼どころか、錢會長にもその勇気はないのだ。

しかし、これだけ多くの家族が見ている中で、本当に一位を陸墨擎に与えるのは、少し厚かましすぎるのではないか。

「陸社長が競技規則に違反したのだから、当然失格です。何を迷う必要があるのでしょうか？」

そのとき、傍らの唐遇は先生の困った様子を見て、耐えられないように口を開いた。

皆も心の中で唐遇と同じ考えだったが、唐遇のようにはっきりと言い出す勇気のある人は、誰もいなかった。

やはり、実力があってこそだ。

陸墨擎は唐遇に視線を向けたが、特に不満な様子もなく、先生を困らせるつもりもないようだった。

彼がこの親子運動会に参加したのは、息子に権力を振りかざして規則を無視することを教えるためではなかった。

「唐社長の仰る通りです」

彼は口元を緩めて笑い、「どうせ最後の総合優勝は私のものですから、この一つや二つのメダルにはこだわりません」

なんという大口だ。

唐遇は心の中で冷笑し、主席台の人々は陸墨擎がそう言ったのを聞いて、胸をなでおろし、競技結果を発表した。

メダルは、当然唐遇の手に渡った。

「陸社長、お譲りいただき、ありがとうございます」