582.全てを1人で抱え込まないで

彼が突然自分の生活から消えてしまった空虚な感覚は、一人で静かな部屋に向き合うときに特に強くなる。

彼は彼女に、「旦那様」とタイプした時に何を言いたかったのか尋ねたが、実は彼女自身にもわからなかった。

ただ、彼のLINEのチャット画面を見て、メッセージが一つもないのを見た時、心が寂しくなっただけだった。

「旦那様」という言葉が、なぜか知らないうちにチャット画面に入力されていた。

陸墨擎は腕の中で暴れていた女性が突然黙り込んだのを感じ、少し心配そうに眉をひそめた。

何か言おうとした時、腕の中から喬栩の低い声が聞こえた。「陸墨擎。」

「ん？」

フルネームで呼ばれて、陸墨擎は心の中では不満だったが、それでも優しく返事をした。

「私、弱くなった気がする。」

陸墨擎：「……」

彼女が突然黙り込んだのは、これが理由だったのか？

「弱くなるのはいいことだよ。弱くなれば、俺が役に立てるからね。」

陸墨擎は彼女の滑らかな背中を優しく撫でながら言った。「どんなことがあっても、一人で抱え込まずに、まず俺に解決させてほしい。そうしないと心配で仕方がないんだ。」

「私、解決できる。」

腕の中の喬栩は、眉をひそめ、反射的に反論した。

陸墨擎は笑って、手を上げて軽く彼女の頭をつついた。

「君が解決できるのはわかってる。でも、そんなに苦労してほしくないんだ。俺の奥さんがそんなに苦労するのは望んでいない。」

喬栩は今回は何も言わず、ただ静かに彼の胸に寄り添っていた。まるで従順な猫のように、彼の胸元で擦り寄った。

このような無意識の小さな仕草が、陸墨擎の心を完全に溶かしてしまった。

30分ほど休んでから、喬栩はようやく動き、彼の体から降りた。

動いた途端、体中が散り散りになったかのように、酸っぱく痛かった。

陸墨擎と自分の体に残された愛の痕跡を見て、情欲が引いた後の理性は、直視できないほどの恥ずかしさだけを残した。

一方、陸墨擎は奥さんの前で、まったく心理的な負担なく露出していた。彼女が眉をひそめて動けない様子を見て、心配そうに即座に近寄って頬にキスをし、地面に落ちていた服を適当に身につけた。

「お風呂に連れて行くよ。」

喬栩は今は本当に動く気力もなく、二人ともここまで来たのだから、彼女も気取らずに陸墨擎に抱かれて階段を上がった。